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シン・仮面ライダーのYAEPINのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.5
「人を守りたいと思う」
「そういうことにしたのね」

開始早々、池松壮亮に地球を救いたいなどと大それた目的語のセリフは重すぎる!言わされているようにしか聞こえない…と頭を抱えたが、敏腕・浜辺美波の気の利いた返しにより、池松壮亮も、この作品自体も一気にその重圧から救われたような気がした。(セリフはうろ覚え)

正直池松壮亮は、顔つきから、ぽつぽつ呟くような話し方から、ミレニアル世代ど真ん中にいる印象があまりに強く、藤岡弘の対局にいる存在と言っても過言ではない。
私はガッツリ平成ライダー世代なので、本郷猛の苦悩や葛藤のことは知らないが、さすがに池松壮亮の雰囲気はダウナー過ぎて、ヒーローの柄とはかけ離れているように見えた。

しかし浜辺美波は、ヒーローに課せられた人類だの地球だのという重すぎる使命感を見事に解体し、仮面ライダーの行動動機を「身近な人の思いを守りたい」という極めてミニマムなものに落とし込んだ。
本郷猛にとっても、この作品にとっても正真正銘のミューズである。

本作は、厳密に言えば元祖『仮面ライダー』のリメイクではないはずだし、現代の俳優が演じて現代に上映される作品として、非常に良いまとまり方をしていたと思う。

正直『シン・ウルトラマン』は昭和ノリをそのままトレースしているようにも感じたので、本作のバランス感の方が好きだった。

そして、森山未來が登場した後半からは、昭和ライダーの単なるアップデート版に留まらず、令和の特撮としての高級感が一気に増した。
彼が自身の身体を扱う時の繊細さにはいつも圧倒されるが、今回も悪役として存在感たっぷりの美しい変身姿だった。
究極ジェームズ・ボンドの敵役としても見劣りしないと思ってしまう。

敵で言うと、顔も分からないKKオーグに心奪われたが、後から本郷奏多が演じていたと知り、『GANTZ』の頃から私の何かに刺さり続けているとしか思えない。

冒頭のかっこいいクモオーグも大森南朋だったとは。
顔を出さない役が多いにもかかわらず、役者陣が豪華すぎて、庵野秀明作品の影響力を感じた。

それにしても、この作品に出てくる人体はトマトで出来てるのかと思うほど血飛沫が凄くて笑ってしまった。
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