うにたべたい

シン・仮面ライダーのうにたべたいのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
2.8
庵野秀明脚本監督の"シン"シリーズ3作目。
1971年4月放映開始の特撮ドラマ『仮面ライダー』をリブートさせた作品で、原作を元に描かれた新たなストーリーとなっています。

仮面ライダーのリブートというと、スカイライダーもそうですし、真、The Firstなど、これまで何度か行われてきました。
仮面ライダーというコンテンツは正直やり尽くした感じがあり、原点回帰も原点の脱却も繰り返されたこれまでの仮面ライダー史があった上で、庵野秀明がどう仕上げてくるのか、ゴジラやウルトラマンと違って庵野秀明が仮面ライダーに一家言持っている話は聞いたことなかったので、若干の不安を覚えつ見に行ったのですが、個人的には不安が的中した結果となりました。

そもそも本郷猛は、知能指数600の超天才科学者で、スポーツも万能でありレーサーとしてもプロ相手に引けを取らない実力を持っている、類まれなる優秀な肉体と頭脳を持つ人物なんですよ。
だからこそ、ショッカーに目をつけられ拉致されたが脳まで改造される前に逃げ出すことができ、さらにその精神力で望まざる力を人類救済に役立てる決心もできたのですが、シン・仮面ライダーの本郷猛は、それに比較するととてもぬるいです。
本作の本郷猛は、普通のそこらの若者で、頼もしさを微塵も感じられず、平成・令和の細い仮面ライダー俳優の感じがあったのが、まずは残念でした。
ストーリーも途中まで完全にメインは緑川ルリ子です。
視聴前はキービジュアルのイメージから、鉄火で無骨な話かなと思ってたのですが、想像と全く異なり、浜辺美波の活躍ばかり写ってました。
確かにルリ子は、序盤、父を殺したと勘違いして本郷猛の命を狙う強い女ですが、私は仮面ライダーがかっこよく悪の秘密結社に乗り込んで壊滅させる姿が観たかった。
どうもマンガ原作を上辺だけさらって実写化した邦画を観ているような、微妙な気持ちになったというのが正直なところです。

良かった面もあり、初代ライダーが怪奇モノから始まった名残である襟足のはみ出たダークカラーのマスクから始まって、後に明るい色のマスクになって2本のボディラインが入る衣装にチェンジするのは良かった。
また、変身ポーズや、2号の初変身時のセリフなど、要所で初代ライダーを感じさせるシーンがあったり、小河内ダムでの戦闘シーンがあったりは良かったですね。
ただ、初代ライダーの聖地である猿島や吉見百穴での戦闘シーンがなかったです。
桜島で微妙にエラの張ったライダーが登場したらファンとしては盛り上がるのですが、ファンサービスを優先してシナリオを置き去りにするわけにはいかないだろうし、仕方ないのかなと思いました。
しかしながらウルトラQの怪獣から始まり、ゾーフィ星人ネタまでやったシン・ウルトラマンと比べると、オマージュがあまり感じられなかったのは気になりました。
シン・ウルトラマンに強いこだわりを感じたのはやはり庵野氏のウルトラマン愛なのだろうなと思います。

ショッカーも登場するのは怪人だけで幹部(地獄大使や死神博士など)は登場せず、怪人は倒されても爆発しない、立花や滝の名前は出るけど名前だけ、五郎少年は名前すら登場しないなど、不満点は多いです。
また、昨今の仮面ライダーではお約束のライダーvsライダーがあります。
これがあるからなのか、個人的には本作の雰囲気は平成ライダーっぽいと感じました。
他の方の感想を読んだ感じでは、初代ライダーファンの受けは良さそうだったので、自分が賛否の否の方に振れるのは自分でも意外でした。
バトルやバイクアクションのシーンはかっこよく悪い作品ではなかったので、気になる方は観ても良いかと思います。