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シン・仮面ライダーのcamusonのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.2
ショッカーたちとの殴り合いの戦闘で、派手な血しぶきが飛び散る演出は、
面白いなと思いました。
作品中で、主人公の暴力・殺人に対する葛藤を端的に表す記号として機能していると同時に、
当時、幼いながらにも感じていた、ウルトラマンにはない、
ゴレンジャー以降の明るい和気あいあいの戦隊ものにもない、
初期の仮面ライダーのそこはかとない何とも言えないグロテスクさが、
翻案され、形を変え、より鮮明に再現されているように感じました。

映像的かっこよさを極めようという姿勢はわかるし、そこそこカッコよいのですが、
等身大ヒーローの場合、先行する「シン・○○」に比べて、
巨大スケールによるスペクタクルな映像で驚きを与えられない分、
庵野秀明ならではの映像表現の幅が限られてしまった気がします。

また、敵の怪人たちを、仮面ライダーの"バッタ"に対応するように、
様々な"虫(むしへんの動物含む)"の改造人間に限定しているのですが、
"蝙蝠"や"蠍"は異彩を放っていたものの、
他は現代的な洗練されたデザインで、昔ながらのチープさが見られないことなども含めて、
「テラファーマーズ」とかぶってしまっていて、新鮮味に欠けると思いました。

話はわかりやすい個人の葛藤や1号2号同士の友情?などがテーマなので、
かなり薄っぺらいです。意識してそうしているフシもあると思われます。
娯楽作品なので薄っぺらいこと自体は全然かまわないと思うのですが、
「シン・○○」シリーズ既作品に比べて、映像的な意外性が少なめなことも含めて、
全体的に作品から受け取る情報密度に、かなりの物足りなさがあり、
大人が十分に楽しめる娯楽の域に達していないと感じてしまいました。
だからと言って、もちろん子供向けではありませんので、ちょっと厳しいのかなと。


P.S.サソリオーグは、あれだけでは長澤まさみの無駄遣い。
殺られるところこそ映像で見たかったです。
音声を聴いただけでは、何が起こっているかさっぱりでした。
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