大道幸之丞

シン・仮面ライダーの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」と「シンシリーズ」を観て来た。
――現在世界的に過去の国民的作品の「リブートブーム」がある。

日本人はピンと来ていない様子だが、バットマンもスパイダーマンも「リブート作品」であり近年の「猿の惑星」もそうだ。
日本ではゴジラやウルトラマン、仮面ライダーには夥しい「リメイク」の歴史はあるが、過去のイメージを踏襲する約束事に縛られてか傑作はない。

今回一連の「シンシリーズ」に私は「BABYMETAL」を重ねる。初老の男たちが自ら愛着のある、しかし自律性のない玩具を意のままに扱う不健全さにおいて。それらを自らは好きなように弄ぶ事を許容するくせに自ら自由に飛翔させようとはしない「管理」の匂いがする。

このシリーズは往年の人気特撮作品を現代の社会に登場させることで、政府や社会との接点を描きリアリティを、あるいは滑稽さを引き出し、往年の作品にリスペクトを保ちながら「あーなるほど」とマニアたちを唸らせるディテールやエピソードを忍ばせている。同じ庵野秀明なので俳優もカブっていて、地続きな錯覚を覚える。

つまりリアル世代=現在上限60才辺りから10代までカバー可能な、不況といわれる映画界では「失敗なし」の恰好の企画なのであろう。

ただし、過去の作品も閲覧可能な現代の20代なりが「これまでの最高傑作」としてこの題材を選ぶかといえばおそらく否と思う。やはり多分に「ノスタルジー頼み」の作品であり
庵野秀明と日本映画界が共謀した「慰み」なのだと思う。

今回のライダーも石ノ森章太郎が好んだ「悪から生まれた正義の故に苦悩する」の描写はむしろ拡大されて感じるが、戦闘シーンの「凄さ」が完全にすべて空振りしているように感じる。

悪漢が妙に敬語で、「だから恐ろしい」という意味は鑑賞者には伝わらず、ライダーも敵役もとにかく口数が多い。流れで説明が充分にできていないからこうなるのか、説明が必要な要素を込めすぎているのか、のどちらかであろう。結局「プラーナ」の争奪戦だったのかと気付くのは最後の最後で、しかしだからと言って、我々の身につまされるものでもない。

「シンシリーズ」は結局原作がその当時、特撮もろくに存在しない時代に、いかに極上のメッセージを少年達に届けたのかの秀逸さをどこまでも改めて証明する存在に過ぎない――という気がして仕方がない。

以前からその予感はしていたのだが、ともかく自分にとって男女ともに良い俳優が日本にはいなくなったのだなと感じた決定的な映画となった。