fuming

シン・仮面ライダーのfumingのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
4.2
庵野秀明によるシンシリーズ3作目。今回は仮面ライダー。公開時、本作は非常に賛否を呼んだ映画であったが、本作を視聴して思ったのは「ヒーローと正義にまつわる男の世界」みたいなものが感じられないと面白くないと思った。
本作で一際印象だったシーンはルリ子の記憶を見て号泣する本郷と本郷のお父さんのエピソードである。前者は、ルリ子の記憶を見て突っ立ちながらただ泣くという場面であり、あまりにその姿は情けなくヒーローには似つかわしくない。だがその姿は「正義のヒーロー仮面ライダー」ではなく「ありのままの本郷猛」の姿であった。後者は、警察官だった本郷の父が殉職をした回想である。本郷の父は拳銃を当時持っており、それを行使すれば命を落とすことはなかったはずであるが、しかしなぜ父は銃を最後まで抜かなかったのであろうか。そんな問いかけが本郷の口を通して我々視聴者に語られる。結論はさておき、そういったシーンやエピソードに対して何か思いを巡らせたり、言葉にできなくても「何か熱いもの」を感じられる人でないと本作は今一つつまらないだろう。しかし、逆を言えば非常にエモーショナルで静かなパッションで訴えかけてくれる映画だと思う。
本作はまさに「まずは観ろ」で合うか合わなかったかは観てからしか判別しにくい作品だと思う。そういう意味で、この映画は「面白いか面白くないか」よりも「好きか嫌いか」の軸で語るべき映画なのだと思う。私自身は本作が好きである。庵野監督の思うヒーロー像、そして仮面ライダーというものに薫陶を受けた気がした。
fuming

fuming