るるびっち

君だけが知らないのるるびっちのレビュー・感想・評価

君だけが知らない(2021年製作の映画)
3.9
50年前の観客が本作を観たら、時制の混乱を理解できただろうか?
昔に比べて、観客のリテラシーは上がっているのだ。

大昔は回想シーンは、順番に出さなければいけなかった。
子供時代<青年時代<中年時代と順番にせず、バラバラにすると観客は混乱すると作り手は思っていた。
バラバラにしても、観客は理解すると証明したのが『市民ケーン』だ。

本作がタチが悪いのは、未来が見えるというミスリードをしていることで、観客は主人公が見る幻影が未来の映像であると誤認することだ。
時制をバラバラにしてミスリードまでしているので、恐らく50年前の観客なら話が飲み込めなかっただろう。
時制の混乱や、子供時代の自分を見詰めるなどの心象描写は、現在の観客なら飲み込める。
昔の観客は、子供の自分を見詰める今の自分なんて映像は理解出来ず、別人と思うだろう。(そこもトリックである)
観客のリテラシー向上に乗っかっている映画。

ところで24年前、『眠れる森』というキムタク・中山美穂主演の野沢尚脚本のTVドラマがあった。
初めキムタクは中山をストーカーしている気持ち悪い男と思われたが、実は遠くからずっと彼女を見守っている愛情深い幼馴染と判る。
その話でも中山は子供時代にトラウマになるような殺人事件があり、当時の記憶を失っていた。
本作と設定が大変似ている。
別にパクったと言ってるわけではなく、24年前日本のTVドラマは今の韓国ドラマを凌ぐほどの脚本力が普通にあったのだ。

この24年で日本は経済だけでなく、色々なものが劣化している。
インボイス制度が導入されれば、日本の漫画やアニメは滅びると反対運動が起こっている。
手塚治虫の時代から、ちっとも改善されない低賃金の労働環境自体が問題だと思うが、インボイスでフリーランスの声優やアニメーター達は増税されて壊滅するとのこと。
何れにしろ、政治家も官僚も日本を安く切り売りする事しかしないので、どの分野も20年後には壊滅寸前までいくだろう。
日本の商品が良いという時代は終わりで、今後はアニメも含めて全て海外ブランドを享受することになるだろう。
既に配信は、アマプラやネトフリに支配されている。
アマゾンは流通も支配する。
医薬品も国内では、ワクチンすら作れない体たらく。
電気自動車になり、トヨタも力を削がれる。
ジブリもディズニー印になり、日本が作れるものはなくなるだろう。
その危機を、日本人だけが知らない。
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