ナミモト

東京自転車節のナミモトのレビュー・感想・評価

東京自転車節(2021年製作の映画)
3.5
ニコ動で鑑賞。
コロナ禍にある今の日本の現実をよく描いた力作と思います。素晴らしいです。

本作を、ウーバーイーツで働く若者の、一生懸命さを讃える作品だなんて、簡単に解釈してはいけない。
走ることを、配達することをやめたら、貯蓄もできないどころか、野垂れ死ぬかもしれない、この労働が常套化することは、まさに「2020年の東京もまた焼け野原」であることの証明ではないだろうか?

もしかしたら、20代の青年の持つメンタルの純粋さが、生活を維持するために、自転車操業的な忙しさに翻弄された結果に、狂気に近づいていく過程なのかもしれない…と。一体どこのだれに、この青年の一生懸命な態度を搾取する権利などあったのだろうか?この青年が、ウーバーイーツのクエストをクリアしようと「システム掌握」しようと躍起になることは、システムに、強いてはこの国の現状に、自尊心までも捧げてしまわない為の抵抗ではなかったか。

ラスト、自転車で国会議事堂に突き進んでいく青年の後ろ姿からは、怒りすらにじみ出る。「新たな日常」は俺たちが決める。そうであらねばならないはずだ。
ナミモト

ナミモト