スローモーション男

東京自転車節のスローモーション男のレビュー・感想・評価

東京自転車節(2021年製作の映画)
4.8
 観てるだけで苦しくなる映画

『フジヤマコットントン』が公開されるということで注目のドキュメンタリー監督青柳拓の作品を。

 2020年新型コロナウイルスによる緊急事態宣言に外出自粛要請が出る。山梨県に住む青柳監督は代行運転の仕事をしていたが失業し、お金がなくなっていく。彼は東京に出稼ぎしに行き、Uber Eatsの配達員としてバイトを始めるのだが…。

 Uber Eatsの配達がこんなにも過酷だったとは…雨の日は注文が多くなり稼ぎが、配達はどしゃ降りで大変。
 青柳監督はなんとか頑張ってバイトしますが、クタクタになっていく。そして稼ぎがなくなってホームレス状態に。

 それでも何とか金を稼いでいく。そこで感じる人の温かさ。店員やお客が笑顔で「ありがとう」と言ってくれるだけで心が安らぐのですよ。

 でもまた不運が…。自転車のタイヤはパンクするし、奨学金返済のための催促の電話は掛かるし、青柳監督は絶望の淵に立たされる。やっと緊急事態宣言は解除され、監督は最後にボーナスの出る3日間70回配達する決意を固める。
 それはまるでコロナウイルスに、緊急事態宣言に、日本政府に、理不尽な世の中に立ち向かうように見える。

 いかにこの世の中は理不尽なのか、安倍晋三は「新しい日常」と言ったがそれは何なのか?
 そして今、コロナウイルスは消えていったが、私たちは自由になれたのか?平和になれたのか?

みんな辛いよね、こんな世界
それでも一生懸命、生きようとしている青柳監督の姿は感動した。