テテレスタイ

アガサと殺人の真相のテテレスタイのネタバレレビュー・内容・結末

アガサと殺人の真相(2018年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

推理小説をゴルフコースに見立てる話が面白かった。

一番ありえない人物が犯人だと見破られてアガサはスランプになってたけど、一番ありえない人物が犯人っていうのは、ゴルフだと何に対応するのだろうか。

まず、推理小説の犯人は、ゴルフのカップ(ホール)に対応すると思う。そこに向かって進むわけだから。そのうえで、一番ありえない人物が犯人になっている推理小説があったとして、それに対応するゴルフコースって何だろうか。たぶん、アルファベットのCの形のコースだと思う。ティーグラウンドの真後ろにカップがある。後ろを向いたら林の向こうにカップがある設計。

アガサはゴルフをプレーするのは嫌いだった。プレーするのは読者。アガサは読者の気持ちを推し量るのが苦手だったということかな。Cの形のゴルフコースは楽しいかと言われると、楽しくないかもしれないw 僕はゴルフをしないから分からないけどw

で、映画(テレビドラマ?)のラストシーンではナイルに死すってタイトルを書いてた。ナイルのNの形のゴルフコースなら面白いかもしれない。じゃあ、CはクリスティーのCだねw



映画の前半、アガサは子供に本を読み聞かせていた。ロッサム万能ロボット会社(R.U.R.)というタイトルの本だと思う。ロボットという単語を初めて創り出した本で有名らしい。ロボットが人類を滅ぼしてしまう悲劇的な内容。でも、ロボットが悪いわけじゃなくて人間が悪いっていうセリフがあって、それをアガサは読んだ。

ここで、人間をアガサに置き換えて、ロボットをアガサの小説のファンに置き換えてみる。ファンはアガサの悪口を言って攻撃するわけだけど、ファンが悪いわけじゃなくて、そういうファンを作り出してしまったアガサが悪いんだよっていう自己に対する反省を促す効果をこの本のセリフはアガサに与えている。

ホームズの作者のアーサー・コナン・ドイルは、開口一番、「我々は殺人事件を売るよりゴルフ球を改良すべきだ」と言っていた。ゴルフを推理小説に見立てたとき、ゴルフボールは何だろうか。たぶん、読者の推理に当たると思う。ゴルフでは、ゴルフボールをプレイヤーがショットして飛ばす。フェアウェイならまっすぐ飛べば楽しいし、グリーンなら勾配を予測してうまくカーブさせながらカップインするのを楽しむ。

アーサーが上記のセリフを言ったときゴルフボールは破裂していた。たぶんゴルフボールの破裂は推理の破綻に対応している。ゴルフはプレイヤーがゴルフボールを楽しくショットしてカップインさせることを楽しむ競技だ。じゃあ、探偵小説も読者に楽しく推理してもらい、犯人を当ててもらう楽しさを提供するべきだろう。読者の推理を作者が妨害して読者の推理が破綻するのを楽しむというのは本末転倒なのかもしれない。でも、個人的には作者が読者に向かって勝負しようぜ!っていうのもありだと思う。

ところで、映画の中盤、歯医者に行った弁護士のジョークがあった。「隣が火事だったからブラインドを下げた。目覚めたら困るので」って弁護士が看護士に言われるジョーク。

なんのこっちゃと思ったけど、火事があればその後の訴訟で弁護士が必要になる。火事は弁護士にとってビジネスチャンスだ。だから火事があったら弁護士は治療中なのに飛んで行ってしまうというジョークなのだろう。でもなぜブラインドを下げたのか。隣が火事ならブラインドを下げても匂いで分かるはずだ。たぶん、そこがこのジョークの面白さで、弁護士は金の匂いには敏感だけど、それ以外の匂いには鈍感ってことなんだろうねw

で、このジョークの少し後で、アガサは正体がバレて探偵から小説家へと自己認識が変化して、そのおかげで犯人逮捕につながった。だからアガサは生粋の小説家であって探偵のまねごとをしてもうまく力を発揮できないっていうストーリーになっている。人それぞれ向き不向きがあるってことだね。探偵は一人で事件を解決しちゃうけど、小説家はたくさんの登場人物たちの力を借りなきゃ事件を解決できない。しかし、力を借りられたら、探偵でも解決できないような事件も解決できてしまう。それが小説家のちから。

この映画のテーマは執着を捨てよって感じだったけど、職業への執着は捨てるべきじゃないとも言っている。人間にはそれぞれ天職があるんだろうね。