Tsuneno

そして、バトンは渡されたのTsunenoのネタバレレビュー・内容・結末

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

同じような境遇に置かれた人であった場合、この物語の見え方はずいぶん違ってくるんじゃないかと思った。
スタートが1人の女性の(敢えて言うと我儘な)自己実現にはじまっていて、そこに全員善人の伴侶が寄り添ったという奇跡が伴わなければこの結末は迎えられなかったというご都合主義者的な物語とも言える。
そうやって守られてきた当人をバトンに例えることに嫌悪感を抱く人もいるだろう。
そういう意味では万人にお勧めできないし、また気をつけなくてはならない。
 
なのだが、それでもなおこの物語は、ある種の人にとってはとても美しい。
ある種の人ってのは、なんだかんだあろうがなかろうが、とにかくなんとか娘の子育てを完遂した男。つまり俺だ(苦笑)
あえて誰かと言えばブラジルに行っちゃった父ちゃんに近いダメダメさだが、まーーーーそれなりにがんばったよな、という思い。
そして、どんな手を使っても子どもを幸せにするのだという信念で動き、時には開いた口が塞がらなくなるような行動を起こす母親なる存在へのある種の畏敬と畏怖の念と、そしてその畏敬と畏怖の前には、ただただ従うしかないという諦観。
 
そして、なんとも言えない彼氏のだらしなさ。
そして、バージンロードを歩く永野芽郁の可愛さ。

これはあれだ、父親の卒業アルバムみたいな作品だな。
うちの娘はおそらく結婚はせず、父親の最大の仕事をする日は来ないだろうと思うので、この作品を俺の送り出す日の仮想記憶として墓に持っていこうと思う。
 
そりゃ奥さんは石原さとみじゃないし娘も永野芽郁じゃないが、俺だって田中圭でも市村正親でもないのだ。
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