まーしー

そして、バトンは渡されたのまーしーのレビュー・感想・評価

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
4.0
4回も名字が変わった女性のお話。

何より、ヒロインの優子(永野芽郁)の親たちが濃い。夢を追いかける男性(大森南朋)、自由奔放な女性(石原さとみ)、お金持ちで懐の広い男性(市村正親)、料理上手な優しい男性(田中圭)……皆が皆、ヒロイン優子の親というから驚き。
こんな空想のような設定に、鑑賞を始めた段階では自分の心が追い付かず。
加えて、石原さとみ演じる女性の、無責任とも思える言動に終始イライラ。

しかし、全ての事情が明らかになる終盤に、感動の波が一気に押し寄せた。
これまでの台詞や場面が、実は伏線だったと気づかされる。
この展開はずるい。イライラした部分の謎が解けただけではない。イライラした自分を恥ずかしく思った。
また、本作では要所でピアノが重要な役割を担う。ピアノ好きな私にとって、ピアノを媒介とした展開は、心に刺さる。

そして、迎えた最後のシーン。
タイトルの意味に納得。そう、まさにバトンが渡された瞬間。
例えるなら、人生は数珠のようなもの。自分を支える人たちが、目に見えないバトンを渡していくことで、自分の人生は成り立つのかも知れない。

単なる人間ドラマ・青春ドラマと片づけるのは惜しい。
よく練られた脚本と実力ある俳優の演技は、観る者の涙を誘うことだろう。
興味のある方はぜひ。