ひのらんげ

そして、バトンは渡されたのひのらんげのネタバレレビュー・内容・結末

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

近年稀にみる天才的な告白シーンの演出。ただし痛恨の蛇足あり。

小学生の「優子」の実母は優子を産んでまもなく亡くなっていて、しばらくは再婚相手の美人継母「梨花」と実父の3人で暮らしていたが、今度は実父が”自分のチョコレート”を作るため、離婚して身勝手に単身ブラジルへ行ってしまう。優子は収入の乏しい梨花との2人暮らしとなる。

時が経ち、高校卒業を控えた優子は、東大卒の第2の継父「森宮さん」との2人暮らしをしていて、まもなく高校を成績優秀に卒業する。(梨花は優子が幼いうちに蒸発してしまった)優子は4年制の有名大学を志望せず、料理学校へ進む決意を露にする。
優子は幼少の頃に梨花の初めての再婚相手となった第1の継父のところに身を寄せたときに少し習った程度のピアノで、卒業合唱の伴奏を引き受ける。相当な練習を積み、披露した。
優子は複雑な環境ゆえに、同級からの虐めや大人たちの偏見にさらされながらも、環境に身を任せ、なすがままに”笑顔”で処世してきたが、高校卒業時には自らの道を自らで決めようとする。同級生ピアニスト「早瀬くん」との出会いで、その自我の強度をさらに高めていく。

2人の母親と3人の父親。
自立した優子のもとに、蒸発した梨花からの手紙が突然届く。

落ち着きかけた物語が、あれよあれよと動き出し、想いが明かされ、交錯する。

ーー
2元化されたダイナミックな時間軸が心地よくリズムが良い。
優子の告白シーンは、稀にみる天才的な演出です。素晴らしい。必見。

あまりにも奔放身勝手な梨花の立ち居振る舞いに、私はイライラさせられる。一方で父親たちは翻弄されるがとても寛容だし、優子はとても”ものわかり”がよくて我慢強く、どちらにも共感できなかったが、秘密が明かされるにつれて徐々に映画と融合していく感覚。バラまかれていた見事な伏線、最後に低周で大きな波が押し寄せて、伏線をまるっと飲み込む。私も映画に飲み込まれるような感覚だった。
後述する蛇足のシーンまでは、、

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残念なのは、前半「石原さとみがヒールなわけないなぁ」と思っちゃったところと、タイトル「そして、バトンは渡された」って、観終わっても違和感が残るところ。(ラストの一言が痛恨の蛇足)

映画の趣旨として、”優子の環境”がバトンなんだと思う。であればそれは複合的なものであって明確な責任遷移とは相性が悪いはすだ。
それなのに、結婚式で優子が第3の父親である森宮さんから早瀬くんに預ける手を移したとき、”そしてバトンは渡された”っていうセリフ。セリフそのものも蛇足だし、映画の総意として”バトン”という概念を否定すべきところだった思う。「父親が3人もいて私は幸せ」という優子の気持ちと相反していると思う。(原作もそうなんだろうか)

痛恨の蛇足。痛い!!
ひのらんげ

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