犬たろ

メインストリームの犬たろのネタバレレビュー・内容・結末

メインストリーム(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ちょっと待てぇ!!🤣🤭😱これがジア・コッポラ監督の長編映画2作目とか、原案の題目として扱うテーマがバチくそええ感じやのに(よくぞ斬り込んでくれました👏)、評価低すぎやせんか!?まあ分からんでもないけどやぁ。。。

まるで新任教員のやんわりとした遠回しな言い草に呆れ返り、その不慣れで頼りない授業に嫌気がさした生徒たちが、ある者は冷ややかな視線を向けたり、ある者は罵詈雑言を浴びせているかのようで、ちぃと残念に思うんよ。

コッポラ先生は素敵な人やのに(知らんけど)、それを気づいてあげれとらんのが至極もったいない感じというか、もっと言やあ可哀想な感じがして、それが逆にもう好きすぎてたまらん理由なんじゃけどね。

「コッポラ先生、あなたは素敵ですよ」と言い寄ったら、逆にビンタを喰らいそうじゃけど、それならそれでまた良しとしようじゃない。(?)

こういう厚かましいほどベラベラと講釈を垂れる映画が、ワシは大好物なんよ。

多くの人に興味関心を持ってもらえるようポップに彩っているかと思いきや、いざ掘り起こしてみれば、思わず目を背けたくなるような、耳を覆いたくなるような、胸が痛むほどの苦しみや雑音が伴なう御託が所狭しと並ぶ。

リンク(アンドリュー・ガーフィールド)は無名の頃から形振り構わず傍若無人に、つばきを飛ばし、醜態を晒し続ける。

罵詈雑言を浴びることも顧みずに、時にチ◯コを晒し、時にウ◯コを振りかざしてでも興味関心を手繰り寄せ、間髪を容れずに口やかましく打撃一閃を繰り出し、世間の浅ましさに暴言を浴びせて苦言を呈する。

「お前ら、どこ見とんねん!スマホばっかし見とらんと、野に咲く花の美しさを、素晴らしさを見てやってくれんね!ほら!これ綺麗やろ!素敵やんか!」とは言ってないが、彼の熱弁は実に巧妙で、無性に好奇心をそそる。

耳を傾けてみれば、どこか的を射ている気がしてしょうがなくなり、目を向けてみれば、その勇ましく力強い振る舞いに勇気づけられ、思わず現を抜かす始末。

民衆の大半が人知れず胸の内に秘めた承認欲求や虚栄心を、リンクが代弁するかのように、縦横無尽に駆けずり回り、大法螺を吹く。

SNSを見て知ったふうに凝り固まった色眼鏡で、その向こう側にいる彼らの本性を、はたまた出来事や物事の本質を、熟慮もなしに何気なく見つめるだけの人間の危うさ、脆さ、浅ましさ、儚さを忠告しているようにも見える。

その一方で、リンクという狂気に満ちた悪童を通じて、昨今の世間に対してどこか嘲笑いながら見下し、揶揄しているようにも思える傲慢な振る舞いを、この映画からひしひしと感じてしょうがない。

クーッ!!いいね!!その鼻につくほど傲慢な感じ!!しかも、彼は群れない!!誰かと連んでコラボしたところで、結局は孤高の狂人でしかない!!

ムムッ!!最ッ高じゃんか!!ああー腹が痛い痛いって!!

痒いところを優しく撫でて慰めてくれるのではなく、引っ掻き回して狂乱の渦を巻き起こすようなこの痛み苦しみ、もう病みつき!!

嘘の上塗りで加工された編集に次ぐ編集の画像や動画に“いいね”が押し寄せ、嘘か実か定かではない綺麗事に“いいね“が殺到するSNSの大海原は、息が詰まるほど澱んでいる。

でも、その澱みが無性に居心地よかったりもする。

フォロワー数の多いインフルエンサーに対して、群れを成して媚び諂い、ひとたび何か不都合があれば、あっという間の手のひら返しは日常茶飯事。

中身なんて大して重要ではなく、表面さえ綺麗に整っていればそれでいいと言わんばかりに、取り繕うだけの虚しい繋がりは数知れず。

煌めく時の人と人との華やかな結び付きのように見えて、蓋を開けてみれば濁るばかりで、疑心暗鬼に陥る人々の滑稽な姿に頭を抱える。

飛ぶ鳥を落とす勢いでセレブへと様変わりする変貌ぶりは、豊潤で濃厚な味わいのように思えて、臭みを誤魔化す巧みな演出に、半ば呆れながらも舌を巻く。

孤独に喘ぎ、野心に踠き、無能を嘆き、非情を晒す無様な人間は、時に魅力的に映る。

ゆえに、溢れんばかりの俗物根性で満ちたこの虚妄の世界は、まるで塵のように、砂のように、取るに足らないちっぽけな存在が、何かのきっかけひとつで一気に成り上がる衝撃と歓喜がある。

そんな面白味の種がそこら中に散らばっているからこそ、常に飽き足りず、次なるカリスマはどこだ!?と探し求める欲求不満な状態の自分がいることを思い知る。

リンクの狂人たる姿を冷ややかな眼差しで見届けながらも、心のどこかでは妬ましさが沸々の湧き立ち、いつのまにか羨望の眼差しを向けている自分に気づいて、思わず膝を打つ。

誰かはいう。渡る世間は鬼ばかりと。

リンクは心穏やかに、“勝手に炎上してろ”と言わんばかりのほくそ笑みながら、悪態を吐く。

「fuck you」

昨日の友は今日の仇か───。

p.s.

これぞアンドリュー・ガーフィールドの凄みよ。

股間に20cmはあろうかというほどの垂れ下がったイカついディルドをはめ込み、尻の割れ目はもちろんのこと、全身の9割は裸のままハリウッドの街中を闊歩した彼の勇猛果敢な役者魂をスクリーンの大画面で見届けられたそれだけで、チケット代の元は取れた。

いまワシは、どえらい惚れ惚れしとうよ。
犬たろ

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