空の落下地点

メインストリームの空の落下地点のレビュー・感想・評価

メインストリーム(2021年製作の映画)
3.0
死は加工できない。装うこともできない。
でも彼は、やりたくて放火したのだろうか。
もっと過激なものを、という客からの要求に応えただけではないだろうか。
彼を糾弾することによって、彼が語ることの脅威性に蓋をできる。
確かに彼のしたことによって、人が一人死んだが、彼は単独犯ではない。
キリスト教は男性主義的という指摘も当たってる。
いかなる異性の為にも自分の外見を偽装するべきではない。
この映画は平等観念の嘘を暴いている。平等じゃないから外見を偽装する必要がある。そしてその平等じゃなさは神か、それに近い人間によって流布されている。
強い文化は現代の聖書だ。SNSは現代の聖書である。
彼がいくら本名と出自を明かして正直になろうが、もうノーワンスペシャルとしか呼んでもらえない。誰もイザベルのすっぴんを必要としなかったように、誰も彼のすっぴんを必要としない。
権威の無い者は権威との一体化を望む。イザベルが彼を誘ったのは性欲からではない。権威者から認められたいという承認欲求だ。みんなノーワンスペシャルに世界を変えてもらいたいと思ってる。世の中の矛盾を、綺麗さっぱりクリアにしてもらいたいと望んでいる。たとえそれが悪あがきだとしても。
正しいことを言えば糾弾されて、人が死ぬ。そんな世界狂ってる。
現代では人間が神を作れる。
空の落下地点

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