MasaichiYaguchi

異物 -完全版-のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

異物 -完全版-(2021年製作の映画)
3.6
「転がるビー玉」の宇賀那健一監督が手掛けた連作短編「異物」「適応」「増殖」「消滅」の4作品を繋げて1本の作品として劇場公開した本作は、延々と続く退屈な時間を過ごす人々の日常に、何ら理由もなく介入してきた謎の異物を通して変化が起きていく様を、SF、不条理、エロ、コメディと様々な要素をハイブリッドして描いていく。
「異物」では、何かが噛み合わないカップル、カオルとシュンスケが登場する。
出会い系アプリでアルバイトするカオルは、下世話で下らない話ばかりしている同僚にうんざりし、御飯を食べにだけ来るシュンスケにも不満を持っている。
そんな不満と不安の中にいるカオルのところに突然“異物”がやって来て、彼女の心の隙間を埋めていく。
「適応」では、トモミの働くカフェには、元恋人同士のコウダイとミナがやってくる。
コウダイが最近、遭遇して同居しているものをミナに紹介したことで、今までの空白や溝が一気に埋まり、話の花が咲く2人。
「増殖」では、工場で働くリュウは作業中に或るものを見つけ、事務員であるミサトと共に工場長のタケシに、違法と知りながらもお願いをしに向かう。
ところが、ミサトの或る行動から事態は思わぬ方向に転がっていく。
「消滅」では、「異物」の時から一年経ち、何かが吹っ切れた様子のカオルがバーへ出掛け、そこで謎の女と出逢うのだが、果たして彼女の正体は?
異物は多分、地球にやって来た異星人だと思うが、その狙いは地球侵略とかいう邪悪なものではなく、私には難民として来訪したように感じられる。
コロナ禍で益々社会が排外主義になっている中、本作で描かれた異物は恰も人々における“潤滑剤”のように見える。