KnightsofOdessa

幸福のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

幸福(1934年製作の映画)
4.0
[幸福を探す荒唐無稽なプロパガンダ] 80点

ゴダールが大好きだったヴェルトフに対抗する形でマルケルが「アレクサンドルの墓」で発掘した30年代ソビエト映画界の巨匠メドヴェトキン。彼はヴェルトフの一連の記録映画"キノプラウダ"シリーズに対して、列車で移動して上映する"映画列車"という構想を持っていたようだが、その対立が何十年も経ってフランスで再び再燃した。そして、ゴダールの"ジガ・ヴェルトフ集団"に対抗した左岸派マルケルは本作品の上映によって"メドヴェトキン集団"を結成したのだ。

本物の幸福とはなにか?という人類の永遠の疑問に対して、農村で搾取され続ける若い夫婦の年代記を描くブラックコメディ。結構悲惨な話なのにキートンっぽい荒唐無稽なギャグとソ連サイレント映画のお家芸である顔芸によって、典型的なプロパガンダものであるにも関わらず観終わっても嫌な気持ちが残らない。これが同じ技術礼賛ものだったドヴジェンコ「大地」との違いだろうか。結局落ち着くところはお金というのが"どんなに搾取されても労働してお金をゲットしよう!"というソ連的なテイストなのか。んなもん信じるやつおるんか、とも考えてみたが、多分いるんだろう(適当)。

スイカ大砲を律儀にリロードするおじさんが可愛かった。足が生えた家も強烈なビジュアル。マルケルありがとうって感じだけど、どんな映画作家でも一度はロシア熱に浮かされるのかね?
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