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太陽とボレロのfilmseeのレビュー・感想・評価

太陽とボレロ(2022年製作の映画)
4.5
森がさわさわと動く冒頭シーンから現実のドタバタに続きクラシック演奏会への流れがこの物語を象徴する見事なオープニングだった。プロフェッショナルの視点から見ると演奏スキルや脚本や俳優の演技などについての意見があるようだが娯楽映画としては高得点を付けたい。
昭和を彷彿させるコントが随所にちりばめられ、地方都市楽団員や率いる女性経営者の生活や悩みが浮き彫りになっていた。俳優個々のキャラが個性的で、分かりやすく安心して見られた。檀れいさんと町田啓太さんのビジュアルだけでも絵になるが、それぞれエレガントで芯の強い女性、少し迷いのある現代の若者をキュートかつ自然に演じていたのが印象的だった。楽団員を演じる俳優さん達の猛練習による吹き替えなしの演奏には感動した。しかし何といっても西本智実さん指揮のオーケストラは圧巻だった。まさに音楽はマジック、映画館ではなく音楽会場に心がワープしてしまった。
太陽とボレロはハリウッドのスケールの大きさや作りこんだ心理ゲームのような作品ではなく、見る人を癒してコロナ下での閉塞感を解き放ち心穏やかにしてくれる。子供からシニアまで一家全員で楽しんで、クラシック音楽への扉を開いてくれる。この映画を見て何か楽器を始める人、ずっと昔に演奏していた楽器を思い出して始める人、クラシック音楽演奏会に行く人が増えるのではないだろうか。
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