みりお

私はヴァレンティナのみりおのレビュー・感想・評価

私はヴァレンティナ(2020年製作の映画)
4.0
<トランスジェンダーの82%が中途退学するブラジル
その平均寿命は35歳だと言われる>

作品の解説にもあるこの事実が、ラストに改めて語られる。
ヴァレンティナと時間を過ごした後だと、この文章が改めて衝撃だった。
ヴァレンティナが、強く美しく生きていたからこそ、彼女の後ろにもっとたくさんの人の苦しみが見えて、心が痛くなった。

自分の名前は、アイデンティティの1番の基盤となる部分だと思う。
それを名乗るだけ。
たったそれだけのために、どれほどの苦しみを乗り越えなければいけないのか…
両親と友人と、たくさんの人に支えられてヴァレンティナは微笑んでいたし、学校に登校したヴァレンティナは一つ救われたと思う。
でも彼女の闘いはまだ始まったばかり。
"自分の名前を名乗る"
たったそれだけのことのために、これほどの苦しみを味わったのだから、当たり前の学校生活を送るのには、どれほどの痛みがあるか見当もつかない。

マイノリティというだけで被害者が逃げ惑い、マジョリティというだけで加害者が我が物顔で歩き回る構図は、どれだけ時が経っても、どんな場所でも変わらない。
でも、この映画が公開されることで、現代ブラジルが抱える問題が海を越えて、また一つ多く伝わった。
慣習や宗教に囚われることで高く高く立ちはだかっている壁が、砂粒ほどのほんの1カケラかもしれないけど、たしかに崩れた。
ブラジルでいまも苦しんでいるたくさんのヴァレンティナたちのために、"わからないもの"や"自分と違うもの"への偏見をなくしたいと、心から思った。


【ストーリー】

ブラジルの小さな街に引越してきた17歳のヴァレンティナ(ティエッサ・ウィンバック)。
出生届の名前ではなく、通称名で学校に通う手続きのため、蒸発した父の行方を捜している。
新しい友人や生活には慣れてきたものの、自身がトランスジェンダーであることは伏せていた。


【キャスト・スタッフ】

*監督:カッシオ・ペレイラ・ドス・サントス

ブラジル出身🇧🇷
大学で映画を専攻し、在学中からフィクションやドキュメンタリーなどを手掛けたそう。
大学卒業後、8本のショートフィルムを手掛けら世界各国の映画祭で70以上の賞を受賞している新進気鋭の監督さん✨
長編映画としては初監督作品となる本作も世界各国の映画祭で上映され、14もの賞を受賞したそうです🌟


*ヴァレンティナ:ティエッサ・ウィンバック

ブラジル出身🇧🇷
彼女自身もトランスジェンダーで、77万人の登録者がいるYouTuberとし発信を続けているそう✨
本作は映画デビュー作🌟
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