しべお

ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言のしべおのレビュー・感想・評価

3.8
日本では戦争を実体験した人がますます少なくなり、己の気持ち良いストーリーに歴史を修正し、悦に入る戦後生まれのネトウヨが跋扈しているが、かろうじて実体験した人はまだわずかに残っている。

急いでそうした方々の貴重な話をもっと残しておかないといけないなと切に感じる一方で、当時所属した部隊の旗を掲げ、勲章を付け、お揃いのキャップをかぶって毎年靖国神社に集うのを心の拠り所にしている方もいる(軍服のコスプレで行進するのを楽しんでるアタオカではなくて)。そういう人達に対して、日本の戦争犯罪の責任とか、国に死ねと命令されて命を奪われた特攻隊員や、無謀な作戦で餓死したり病死した兵士は無駄死にだったではないか、などとはさすがに言えないだろう…。

壮絶な経験を生き抜いた兵隊仲間との絆や、亡くなった兵隊仲間への想い、そして所属部隊への誇りもあるんだろうと想像できるけど、結局は国に利用され、人生をふりまわされ、一方で、一般市民も含め自ら同調圧力に流され、進んで国に加担したわけで。それはドイツも日本も変わらない。ただ、この映画での静かで怒れる追及の手が緩められることはない。そのぶれない問題意識が日本との違いなのかと思った。例外として浮かんだのは『ゆきゆきて、神軍』だけど。

結局、人間とはどれだけ哀れで愚かな生き物なのかと思わずにいられない。そして、自分ならどうしていた?どうする?という問いへの答えは堂々巡りして見つからない。

そんなことをこのドキュメンタリーを観終わってから考え続け、ダウナーモードに入ってしまうのだ。
しべお

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