このレビューはネタバレを含みます
原作は『きみの鳥はうたえる』の早逝小説家佐藤泰志によるもの。
函館出身の佐藤の原作を同じく函館の市民映画館・シネマアイリス代表の菅原和博が惚れ込み企画・製作・プロデュースを手掛けている。今後も佐藤作品をシリーズとして映画化したい様子。
自律神経失調症の診断が出された工藤和雄(東出昌大)は回復を早める行為として勧められたランニングを毎日欠かさない。妻の工藤純子(奈緒)とは東京時代に職場結婚をしている。
方や地元の高校生小泉彰(Kaya)と高田弘斗(林裕太)はランニング中の和雄に面白半分で一緒について走るようになり会話も交わすようになる。彼らは彼らで部活や学業で蹉跌を抱えながら過ごしている。
和雄が次第に回復を見せる中で純子が懐妊する。しかし病気になって以来夫婦の間柄がギクシャクし始める。そして、研二と弘斗はささいな事で仲違いし、それが直接の原因ではないが、彰は泳げないのに海に飛び込み亡くなってしまう。
和雄には親友の佐久間研二(大東駿介)がいるが、ほぼこの5人の人間関係で話が進んでいく、話し合いの結果、純子は東京に一旦戻り出産をすることに。和雄は病院で治療に専念する。
会話が極力抑えられていて、沈黙の中に思考が流れていて、そこを読む事が出来ないと、この映画はさっぱりわからないものになるだろう。
極めて淡い人間関係の物語だが、丹念な描き方に好感が持て心に残る映画だ。
尚、原作の舞台は八王子市であり、妻の設定はなかったらしい。和雄の自律神経失調症は佐藤泰志が悩まされていた病気で、作家本人の姿が投影されている。