kyoko

セールスマンのkyokoのレビュー・感想・評価

セールスマン(1969年製作の映画)
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買うって言ってないのに「現金?代引き?頭金は?」と畳みかけるやつからタワシひとつも買う気にならないけどね、フツーは。終始咥えタバコで「近所から金借りる案」とかもうヤクザやん。

それが「聖書」となるととたんに「買わねばならない」という強迫観念に駆られるらしい。信仰心につけ込まれるというよりも、あきらかに分不相応な買い物(現在の価値で4万円)と分かっていながら、この一冊によって起こるかもしれない何かしらの奇跡を期待しているかのよう(だいたい急に我にかえっていた)。
それはこの仕事に人生逆転をかけるセールスマンも同じ。人生に迷走するが如く街中を走り回り、宝探しのように他人の家をノックし続ける。

想田監督がレクチャーしてくれたように、起承転結を生み出した編集が見事。見事すぎてちょっと作られた感があるのは否めないし、やはりワイズマンの方が好みだなとは思うけど、ダイレクトシネマ(という言葉、恥ずかしながら初耳)特有の緊張感を孕んだ人間ドラマは充分に楽しめた。

個人的にはどーしたのってくらいにグンニャリしたイエスタデイがツボ。
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