櫻イミト

バーダー・マインホフ 理想の果てにの櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.5
極左組織ドイツ赤軍の、結成(1968)から初代指導者ウルリケ・マインホフとアンドレアス・バーダーの死までの8年間を描く。 2008年ドイツ製作。アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

ドキュメンタリー映画「革命の子供たち」(2010)でドイツ赤軍とマインホフに興味を持ち鑑賞。

実在の反体制組織の映画化としては史上最高の出来と思う。テロリストと呼ばれる彼らを否定も肯定もすることなく真正面から捉え、活動の動機と破滅していく様をきっちりと描いている。編集演出ともにハイテンポでサスペンスフル。当時の政府対応や世界とドイツの時代背景も組み込まれていた。特に暴力描写の容赦のなさが際立っていて、テロルを取り上げる上で最重要ポイントなのだと再認識した。

現在のイスラエル・パレスチナ紛争を頭によぎらせながら、国が振るう暴力と地下組織が振るう暴力について、改めて考えさせられた。

中でも、彼らドイツ赤軍(RAF)とパレスチナ解放戦線(PFLP)の邂逅シーンは興味深かった。反帝国主義という主張は近いが手段がまるで違う。ドイツ赤軍は都市ゲリラで、PFLPは目の前の戦争なので相容れない。ちなみに日本赤軍はPFLPと連帯していた。

日本のかつての地下組織については若松プロが映画製作しているが、スタッフキャストの映画制作の実力が足りておらず、さらに観念的すぎるため、限られた観客にしか作品が届いていない。日本社会にとって一大テーマのなのは今も変わらないので、最後の若松プロメンバー白石和彌監督には是非「日本赤軍」を映画化してほしい。「止められるか、俺たちを」の第三部完結編としてふさわしいのではないか?

※本作で使用されたロック音楽
「ベンツが欲しい」(1971)ジャニス・ジョプリン※死の三日前に録音
「マイ・ジェネレーション」(1965)ザ・フー
「風に吹かれて」(1963)ボブ・ディラン
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