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幸せは、ここにあるのこなつのレビュー・感想・評価

幸せは、ここにある(2021年製作の映画)
4.0
俳優のビリー・クリスタルが監督・脚本・製作・主演を務めた作品。アメリカでは2021年上映されたが、日本国内では劇場公開されなかった。アマプラで配信終了間近。

認知症のコメディ作家と年の離れたシンガーの友情を描いたコメディタッチのヒューマンドラマ。

最初はアルツハイマー型認知症なのかと思って観ていたら、医師の診断によれば病名は「クロイツフェルトヤコブ病」。確定診断出来る唯一の方法が遺体解剖というから何とも恐ろしい病気だ。急速に認知症が進行する。

ベテランのコメディ作家で業界から一目置かれる存在のチャーリー(ビリー・クリスタル)は、妻を亡くし子供達とも離れて暮らしている。チャーリーは初期の認知症を患っている。ある日、自分とのランチ権を落札したエマ(ティファニー・ハディシュ)と食事をする。彼女の元カレがチャーリーのファンで、エマはチャーリーが何者かも知らなかった。こうして出会った2人だったが、いつしか互いにソウルメイトのように感じるようになり、人種の違い、年の差を越えた固い絆を築いていく。

歳を取れば誰だって物忘れは酷くなるし、若い時には簡単に出来たこともひとつひとつ限界を感じるようになる。毎日通い慣れているジムのロッカーの場所を忘れたり、友人の名前が出てこなかったり、急にフラッシュバックで幻を見たり、イライラして怒りっぽくなったり、そんなレベルはまだまだ初期の段階だとしたら、自分が壊れていく当事者の不安、恐怖、混乱、悲しみは計り知れない。そんな老人の苦しさをビリー・クリスタルが見事に演じている。

そばにいて世話をするのに一番良いのは愛する人またはプロの介護士だと医師は言う。チャーリーは子供達、特に娘とは確執があり上手くいっていなかった。知られたくないという気持ちやプライドもあり、素直に助けて欲しいとは言えない。チャーリーの魅力ある人柄に触れたエマはチャーリーに寄り添っていたいと強く思い、やがて愛する家族達も真実を知ることになる。

ユダヤ教の成人式「バット・ミツバ」が12歳の孫娘を祝うために開催されていた。ユダヤ教の成人式って若いなぁと驚く。

ビリー・クリスタルとティファニー・ハディシュの掛け合いのテンポがとても良く、魅力的な2人が一見しんどそうな題材を温かく纏めていて、感動作だった。
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