桃

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)の桃のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

1969年7月20日、人類が初めて月面着陸した日、ニューヨークのハーレムでは、黒人アーティスト達による革命的な音楽フェスが開かれていた。
ウッドストックの裏で行われたイベントのテープは、当時価値を見出されず、50年近くの歳月、地下室で眠り続けた。

半世紀前の映像と音源、憧れは強いものの、どれだけ入り込めるかなと不安もありながら鑑賞を始めたが、その心配は無用だった。
当時の画角、ざらついた画面ながらも、音源は綺麗にノイズを気にならぬクリアさまでリマスターされ、夢中になって鑑賞出来た。

正直、観に行く前は、スティーヴィーワンダーやニーナシモンの若かりしライブ映像が観れるなんて胸熱、だなんてライブ映画を観る気満々だったが、そんな自分を恥じる。
ソウルミュージックの名をそのまま体現するかのように、アーティストはそれぞれ、集まった黒人市民と共に、祈りを捧げ、傷を癒やし、前を向き、自分達の世代から変わって、一つになる為に、音楽を通して訴えかけている。

もともとゴスペルで、説法では伝わりにくい若者へ神の言葉を伝えた。
別に黒人だけの話ではない。
どんな人間も、神の呼び方が違っても良い、民族も音楽のルーツも違っても良い。
それぞれが尊重し合いながら生きていく、そのために音楽で一つになる。
ハーレムの広場はソウルで繋がっていた。
1969年のハーレムの空気を感じられた。

皆さん素晴らしかったが、個人的には当時の若いニーナシモンの力強さ、かっこよさに痺れた。
桃