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サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のradioradio526のレビュー・感想・評価

4.0
「あのフェスはコンクリートの地面に生えた一本の薔薇だった」

「サマー・オブ・ソウル」鑑賞。

ウッドストックがあった1969年…ニューヨークのハーレムでもう一つの大規模音楽フェスがあった…実にその動員30万人。
しかし、このフェスの存在は忘れられ、世に出ることは無かった。
その封印が50年の時を越えて解かれる。
フェスの名前はハーレム・カルチュラル・フェスティバル。黒人達が革命の季節に打ち上げたエネルギッシュで輝きに満ちた音楽の祭典だった。

オープニング、いきなり若かりしスティービー・ワンダーの登場でこれから始まる音楽映画がどれほど刺激的なものなのかとワクワクした。
ところが証言に現れたのは「観客」という名も無き男女。往時は子供であったり、大学生だったり…幻のようなあのフェスを人々は思い出の欠片を拾い集めるように語り始めた。
Black Lives Matterの流れを受けての作風とも取れるが、あえて対比的な手法は取らず、当時をそのままに切り取っている。つまりは「言わずとも見ればわかる」ということなんだろう。
何も変わっていない…あの時の嫌な空気は2021年にだってこびり付くように残っている。
キング牧師を奪われ、ケネディを奪われ、マルコムXを奪われ…拠り所を奪い取られた黒人…そのガス抜き効果を狙って開催された幻のフェス、封印されるべくしてされていた感がある。

全ての演者が素晴らしいのだけど…マヘリア・ジャクソン、ニーナ・シモン、スライ&ファミリーストーンには痺れまくった。マヘリアのパッション、ニーナの威風堂々、スライの革新性と高揚感…音楽映画で泣くことはあんまり無いけど泣けたなぁ。メイビス・ステイプルがマヘリアと一緒のマイクで歌えたあの日を「人生最良の日!」と大切に想っているのもジワジワ暖かい気持ちになれました。
副題である「(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」は原題のそのままだけど、とても良い!!変な邦題を付けずにそのままいったセンスに拍手だ。素晴らしい!!
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