はせ川

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)のはせ川のレビュー・感想・評価

4.0
60年代後半のブラックミュージックのライブ映像をいかんなく観せてくれるという期待は、良くも悪くも裏切られました。

躍動感の塊のような冒頭のスティービーのドラム、マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズのデュエット、あらゆる先端のものをいち早く取り入れたフィフスディメンションやスライ、ニーナシモンなど、音楽シーンは最良の部分が切り取られているが、それらを生み出した社会的背景のほうにかなり焦点が当てられていて、ブラックミュージック(というか現代まで続くアメリカンポップス)と公民権運動とキリスト教は切っても切り離せないのだと、異口同音に何度も何度も見せつけられる。
副題に付けられたギルスコットヘロンの引用も、ウッドストックと同じ年に行われたという前置きも、コレがどうして今日まで出てこなかったのかという明らかな問題提起だと思う。

音楽は素晴らしい。でも音楽を、レコードを、音楽フェスを、日々楽しむ一人として、それらを受容するあり方を問われた気がした。「音楽に政治を持ち込むな」という声や態度は、これを観た後ではもう言えない。
(目に目を歯には歯をなやり方をしていなかったのはスライだけなように見えたのも、なんか虚しかった)
はせ川

はせ川