一見好青年なんだけど、とんでもなく業の深い人間を演じさせたら抜群にはまる莫子儀。まさにそんなはまり役を本人も自覚し生き生きと演じている感じ。
この家族関係は…というのと、健一の業のありどころとか平行してあきらかにされていく。いわゆる同性愛映画なんだけれども、それが主題になってないところがすばらしい。これは同性愛映画ではなく業映画なんだなぁと思いながら鑑賞。
もちろんゲイという要素が物語には絡んでいるんだけど、それは例えば苺が好きとか、その日は雨が降っていた、みたいな一要素として存在する。
総合的には「もう少し隙の無さがほしかったなぁ」と言うのが正直な感想。こういう重厚な作品を作る上では、台湾映画の限界がまだまだあるのかなぁ、なんて生意気にも思ってしまいました。
とはいえ、10年ほど前に台湾ドラマで見かけてちょっと気になる俳優さんだった莫子儀。アラフォーで金馬奨を得獎したと言うことは、感慨ひとしおであります。台北映画祭、金馬奨での落ち着いたスピーチも素晴らしかったです。