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親愛なる君へのakrutmのレビュー・感想・評価

親愛なる君へ(2020年製作の映画)
3.4
今は亡き同性の恋人の母親と息子の面倒を見ている青年が、義兄の訴えによって殺人容疑で逮捕されるという出来事をきっかけとして、事件の真相を描き出しながら人々の愛情を描いていく、チェン・ヨウジエ監督のサスペンスドラマ映画。

それほど複雑なストーリーが用意されているわけではないが、以前からLGBT映画には定評のある台湾映画界だけあって、本作でも同性愛に対する社会的偏見がきちんと描かれている。一方で、ゲイである主人公の青年を聖人君子として描かずに、愛に苦悩する人間の狡猾さなども描くなど、しっかりとした恋愛映画にも仕上がっている。もちろん、養子となった亡き恋人の一人息子とのゆるぎない愛情にも思わず心を動かされてしまう。その一番の要因は、主人公の青年を演じたモー・ズーイーの演技だろう。すでに俳優としてのキャリアは長いが、本作の演技で初めて台北電影獎と金馬奨で主演男優賞を獲得している。また、母親役のチェン・シューファンは、この年の金馬奨で『弱くて強い女たち』で主演女優賞を受賞するとともに、本作で助演女優賞を受賞するという快挙を成し遂げている。

あと、二人で見つめる雲海のシーンがとても壮大で美しかった。台湾のどこなんだろう。
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