デニロ

玉割り人ゆきのデニロのレビュー・感想・評価

玉割り人ゆき(1975年製作の映画)
4.0
1975年製作公開。原作三木孝祐、松森正。脚色田中陽造。監督牧口雄二。同時上映『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』。東映ポルノと呼ばれていた作品群がありました。本作は東映ニューポルノ製作費500万円。

玉割り人とは、遊郭に売られたフレッシュギャルに性戯を教える役目を持つ女。大正時代の話なんでフレッシュと言っても田舎育ちのそれなりの女子ですけれど。そのフレッシュギャルを彼女が品定めして女の等級を決める。その品定めというのは目視するのではありません。玉割り人が五感を駆使して女たちを攻め立て、性感反応と分泌物を確認して、この娘は一級ですよ特急ですよ、とかなんとか。それを聞いて狒々爺が値を付けるのです。

その玉割り人/ゆきを潤ますみが演じます。日活ロマンポルノで彼女を観ていた頃、彼女のお顔はもう少しふっくらして可愛いお顔で大きな形のいいおっぱいとのアンバランスがまたなんとも。日活ロマンポルノを経て本作の玉割り人。お顔がキリリと締まっていていかにも冷酷で薄情な権力側の女です。遊女の足抜きの仕置きをするのも彼女たちの役目です。

ある女が足抜きを試みます。捕まった女曰く、逃げ出せばどんなことになるかは知っているけれど愛し合った川谷拓三がその時は一緒に死のう、と。それを聞いた川谷拓三は、そんなことは言っていない!!この女に唆されたんだ!助けてくれ!!仕置きをしていたゆきは冷ややかに聞き流します。女の生爪を、1枚2枚と引き剝がします。どうする、この男の始末は。ゆきは、女に問いかけます。川谷拓三の男が欲しい。小刀を女に渡すゆき。躊躇する女。やめてくれ、クンタキンテの如き地叫び。気を失いそうに慄くわたし。緊張が走る中、ゆきが小刀を手にして躊躇なく川谷拓三の男根を切り落とす。わお。

そんな彼女も知り合った無政府主義者大下哲矢に身もこころも蕩けてしまう。女を捨てた玉割り人だったのに。また女になってしまった。東京へ行くという大下哲矢に付き従うゆき。だがそこに立ちはだかる川谷拓三。

原作は劇画なのだそうだけど、物語はロマンポルノの脚本の主翼を担っていた田中陽造の世界が満ち溢れている。そして牧口雄二監督の端正な演出。

国立映画アーカイブ 逝ける映画人を偲んで 2021-2022(監督/牧口雄二) にて
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