怡然じらく

成れの果ての怡然じらくのレビュー・感想・評価

成れの果て(2021年製作の映画)
4.1
続けて2回見た。印象がガラッと変わる映画。

そもそもは闇堕ちした萩原みのりが見たかったからで、その点は大満足。
目線の運び方や台詞回しなどがいちいちかっこいいし、過去に負けたくない、復讐一筋な感じもかっこいい。「RISKY」のキャラから弱さをひっこ抜いたみたいな、求めていた萩原みのりが観れた、という感じ。

その強さを一回目は純粋に堪能してカタルシスも感じたものの、終盤の姉の一言で、おや?っと。

試しに2回目みたら、姉への同情が高まり、妹への嫌悪がにょきにょきと。
小夜はある過去に苦しめられているけど、その小夜もまた、姉を苦しめてきたのだなと。
しかも厄介なのは、小夜を苦しめているものはしっかりと事実として存在していて、加害者も少しは悪びれているのに対して、姉を苦しめた小夜の言動はどれも曖昧なもので(姉の初彼氏をとったというのも小夜が否定すればそれまで)、小夜自身も全く加害者意識がないこと。
小夜は「被害者の強さ」を振りかざせるし振りかざせるようなタイプ。
姉は世間から見たら被害者ではないし、周りに感情を出せないタイプ。

その意味で、私は姉に同情する。
私自身、クラスに一人はいる小夜のようなカースト上位キャラに怯えて生きてきたというのも大きいんだけども。

事件があった前も、きっと変わらずこんな感じの人間だったんだろうなっていう。演技がうますぎて、画面越しに見てるのに縮こまってしまうような。

口が無駄に達者なとこ、親の葬式任せた挙句「そういうの好きでしょお姉ちゃん」、「いじめもポジションじゃん」発言。結局全部かっさらっていく感じ、姉に同情する。

小説女のクズさがかわいいまである。ただのバカじゃん。
しかもピーナッツ砲でけっこうカタルシスも味わえる。

もちろん。もちろん姉の彼氏とメガネ野郎がいちばん悪いし小夜のしてることも正しいというか理解できるんだけど、すっきりしないのは小夜に同情しきれなくなったこと。
小夜の苦しさに純粋に入り込んで映画を楽しみたいのに、彼女の人間性を垣間見たらその救いさえも断ち切られたような。

こういうのを扱った映画ってキャラクターの立ち位置を明確にするしそれが気持ちよくもあるけど、この映画はしっかり「人間」を描いている。誰かにとっての被害者は、誰かにとっての加害者でもある。
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