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恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜の教授のレビュー・感想・評価

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ある意味では今年公開された「花束みたいな恋をした」にも通じる残酷なまでに「恋すること」のシンドさを突きつけられる一作。

画面自体はポップな配色とディテール。前半のラブコメテイストに、ドヤ顔をしないコメディ演出のスマートさも楽しい。
とにかくモブキャラたちの顔面の力には何度も笑ってしまった。

しかし、主人公の2人を結びつける「潔癖症」は日常生活を生きる上で「障害」だとしても2人が同じ目線、歩幅で生きる上ではとても重要で、そもそもその「障害」だって…綺麗事を言うわけではなく事実として、個人を個人たらしめる「個性」のひとつであり、アイデンティティの一部である。

そのアイデンティティの激しい共感によって恋が生まれ、強く結びついている美しさには、涙があふれてしまう。

そして、その「障害」を取り払って、シンプルに「同じものを感じ、あるいは見ていた」2人のどちらか一方が同じものを感じられなくなった時点で、それは「普通」という社会に否応なく取り込まれていく残酷を後半はグイグイ描いていく。

自らが抱えているその「障害」だって分かち合えることができればそれは何よりの幸福な時間であったのに、それを「普通」が引き裂くのだ。

しかしこの映画はそこに留まることをせずさらに深く、容赦なく真理を突きつけてくる。
結末に示されるのは、その共有できなくなった価値観が問題なのではなく。
その「関係の終わり」を幸福の絶頂の中にすら不安として抱え、現実を見つめ続けているのは「女性」の側であり、状況や環境が変われば無自覚にその社会の「普通」に飲み込まれていく不幸は「男性」の側にあるということ。

恋愛関係の終わりは普遍的であっても。
その関係性の中で、どんな時でもシビアさを忘れない女性と、あまりに無邪気で無自覚な男性を浮かび上がらせていて、見事な作品だった。
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