タイトルから想像していたのは、悲壮な進軍ラッパに追い立てられ、「虜囚の辱め」より「戦死」を選択せざるを得ず、無謀な集団脱走を企てた捕虜たちの怨嗟の記録。
でも実は、明るく前向きな捉え方を次世代に繋ごうという、事件生存者たちの想いを伝える力強いメッセージを持つ映画でした。
だからこそ、このタイトルはちょっとなあ、という思い。
当事者(正にご存命中に肉声を聞くギリギリのタイミングでの撮影!)へのインタビューはもちろん映画の大きな柱なのだけれど、そこに岡山を拠点の一つにする瀬戸内海放送制作ならでは、の数本の柱が加わっています。
邑久光明園、山陽女子高校、坂手洋二さんの燐光群による芝居『カウラの班長会議』という三つが総合して、「岡山映画」って言っても良いくらい。『繋がる70年、カウラと岡山』というタイトル、なんかいかがでしょう?
光明園で暮らすかつてカウラで捕虜だった方はカウラで発症し、収容棟から隔離され一人テント暮らし! を強いられ、帰国船でも看板のロープ小屋(一畳くらいだと)で雨ざらしの身だったそうです。光明園で結婚されたとのことですが、もちろん「手術」の条件付き。そんな話をとにかく物静かに淡々と語る。
授業で継続して光明園やカウラを学んできた高校生(と卒業生)たちは、教員と一緒にカウラを訪ねるけれど、そこでも清々しいくらい自然体の語りを披露してくれる。
そして「同調圧力」による脱走=犬死(1,000人超の捕虜のうち230人以上が亡くなってる)に、ありきたりな「犯人=体制」批判を向けるのではなく、「大人」の結末を提示して、より実りある成果を掲げる坂手演劇。
複数の柱の提示の仕方、まとめ方に若干の不満をお持ちになる向きもありましょうが、肯定感がとても良いメッセージを持つドキュメンタリー映画だと思います。