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かそけきサンカヨウのradioradio526のレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
3.8
「自分史上、一番古い記憶って…憶えてる?」

「かそけきサンカヨウ」鑑賞。

高校生の陽は、幼い頃に母の佐千代が家を出て、父とふたり暮らしをしていた。
しかし父が再婚し、義母となった美子とその連れ子の4歳のひなたとの4人家族の新たな暮らしが始まった。
そんな新しい暮らしへの戸惑いを、同じ美術部に所属する陸に打ち明ける。
実の母・佐千代への思いを募らせていた陽は、絵描きである佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をする。

志田彩良の…そのあまりの清々しさと透明感で気持ちが浄化されてしまったw
「ゆるキャン」のちょっぴりドライな友人役、「ドラゴン桜」の陰のある優等生役、すごく自然な演技が出来る子だなぁと思っていたけど、主役になった途端に主役の顔になっている…実に女優だなぁ。
しかもこういう素直な役柄がとても似合っている。父との暮らしが壊れていく中で、生き別れた母、新しい家族、そして恋愛の間で移ろいゆく女子の心情を最後まで丁寧に演じきっている…素敵だ!
既に高い評価を得てる新人女優だけどもっと大化けの予感がする。

相手役の陸を演じた鈴鹿央士も良かった。何処かしら物憂げな少年らしさを残しているのは年齢的にもこのタイミングしか無かったと思うけど、何ものにも成れていない迷いが、じれったくもあり、愛おしくもあり…。
少し籠ったような声なんだけど、それがすごく陸くんのイメージに合っていた。

今泉力哉監督の作品は観終わった後で「語れる余白」みたいなのが大きい。
「愛がなんだ」「街の上で」「Mellow」「あの頃」。
全部、終わった後に登場人物の行動と心情を慮って話したくなる。
映画は独りで観るけど、今泉監督のは誰かと観るのも悪くないかも…とか思ってしまう。

純喫茶で高校生男女5人がだべっているなんて…実はもう郷愁じみた景色なのかも。
その場面ひとつですら誰かと話したいw。
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