ちろる

かそけきサンカヨウのちろるのレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
3.8
「恋人が、できた。」

そう、父親が突然言った。
父1人娘1人の生活家のこと全てをこなしてきた。
おかんをこなしてきた。
自分の元を去ったさちよさんと会って、新しいお母さんを"お母さん"と呼べるようになった。

よしこさんと、ひなた
新しい光が新たな居場所を作ってくれる。
それでいい、それでいいんだ。

やりたいことや夢があるから偉いわけじゃない。
やりたいことや夢がないから負い目を感じる必要なんてないのに、そういう空気感が思春期の青年たちを苦しめたりする。
いつの間にか自分がそういう苦しめる存在になることもある。

居場所を探して、探してもまた裏切られて、嫌になることもあるけど、自分と一緒にいたいと笑って求めてくれる人がいればそれが居場所でいいのかもしれない。

人と人との縁は不思議で、はっきりとした境界線じゃなくて曖昧であればあるほど心が楽になれる。
誰かが誰かを思うその気持ちが親子愛なのか、友情なのか、はたまた恋愛感情なのか、そういうのがぼんやりしていることが大事なそんな時期もあってそういう風に享受する事で色んなことが楽になる事もあると私は思う。

今泉監督の作品は割と観ている方だとは思うけど、その中でも毒がなく、【やさしさ】の度合いは一番高くて観進めるたびに自分の心が洗われる、そんな気持ちになった本作。

ヒロインの陽役は、志田彩良さんでこの陽の男友達の陸を演じたのが鈴鹿央士くん。
ドラマ「ドラゴン桜」で有名な2人ですがあの時とはまた全く違うほのぼのとした可愛らしい高校生の役がハマっていて、ずっと彼らを観ていたいと思ったほど微笑ましい。

悪い人や意地悪な人が出てこないこんなお話を、時に人は綺麗事だと言うかもしれないけど、彼らに流れている丁寧であったかい空気を感じ取れば、(こんな優しい世界も嘘じゃないかもしれない)とそう思える。

タイトルにもあるサンカヨウのお花がとても美しくて、いつか道端でこのサンカヨウに出会ってみたいなと思った2022年春でした。
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