ラピュタん

ベネデッタのラピュタんのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.6
エロティックな
極上サスペンス

修道女となったベネデッタは奇跡を体現するが、その真偽は?
彼女の信仰は本物なのか?

中世のもつダークな雰囲気と修道院の不穏な空気感が物語を盛り上げていく。
主人公には強さと華があるだけではない。
美しい肢体を惜しげもなくエロティックに曝している。
強力な魅力があるが、激辛なので万人向けとはいえないだろう。


宗教という足かせは、現代からみれば不自然だ。
ベネデッタの行いはタブーとされていた
今見ると、プライベートな営みに過ぎず
少なくとも、大罪ではないのだが…。

昔の人々の生活は衛生的ではなく、迷信や疫病(ここで詳細に描かれるペストなど)に支配されていた。
栄養面では庶民に比べて恵まれていたはずの聖職者といえども、
科学的な知見がない中では、疫病から免れることは不可能だっただろう。
このあたりの詳細な描写が非常に優れていたのも収穫だった。

ベネデッタは、聡明だが妄想癖があったよう。それが信仰心とリンクしている。
彼女が襲われる激しい痛みへの処方に麻薬が使われているが、本人さえも制御できないトランス状態がしばしば描かれている。
麻薬は、精神症状を悪化させたはずだ。彼女には統合失調症があったのだろうが、これが彼女を理解するうえで素晴らしい効果を生み、謎が深まっている。

(パラノイアは軽いものも含めると、現代米国では6人にひとり!と増加傾向にあるとする研究もあり、これは適応上の価値を指摘されている…ただし、昔はもっと少なかったはず。なお、統合失調症は、今日100人に1~2人くらいとやはり珍しくはない)

カソリックが精神的に支配する土地では、修道院というシステムはひとつの生き方として普遍的に存在していただろう。
信仰と罪の償い(行為)の両方が必要とされていた時代、懺悔のみならず免罪符の出現もすでにあった時代の話。
つまり、時代背景の概要は(詳しくはないのですが、ご容赦ください)ルターの宗教改革(信仰によって人は救われる、免罪符なんてもってのほか!)が16世紀前半にあり、それが異端とされた分裂が北欧州に広がりつつある時代、総本山の足下南国イタリアはトスカーナ地方での17世紀のお話であるため、その内情への批判が随所に見受けられる。
しかも、当時の信仰者の内心の煩悶に焦点が当てられているので、内容に深みが感じられてとても見応えがあった。
因みに、ハレー彗星☄️は1607年に出現し、当時ベネデッタ17歳頃。修道院長には1619年に選出されたので、あの大彗星は違う彗星か。


エロス(愛)と信仰 
これらが相いれなかった時代の悲劇、ともとらえられそう。

性と聖の恍惚は似て…非なるもの??
ベネデッタにはどうだったのだろうか

主演のヴィルジニー、修道院長シャーロット・ランプリングなど配役も素晴らしい。
贅沢に作られた満足度が高い作品です。


Benedetta = blessed
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