木蘭

ベネデッタの木蘭のレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.7
 同じペストの時代を描いたヴァーホーベン監督の『グレートウォリアーズ』などと比べると、ハチャメチャな猥雑さや残酷さに欠けるし、ブラックユーモアたっぷりのグロテスクな表現も余りなく、随分と大人しい印象を受けた。
 もっとも、この手の修道女物は、見世物映画などで良くあるジャンルなので、性表現や残酷シーンなどを比較しても仕方が無いのだが、それでも少し大人しい。

 ベネデッタが同性愛で裁かれた初めての修道女という点に監督が興味を抱いたとの事だが、彼女にまつわる要素を含めて描くテーマがそれ以外にも在り過ぎて、全体的に焦点が絞りきれないまま薄味に仕上がってしまった様に思う。
 それと機知に富んだ純真な少女時代のベネデッタを描いているので、急に策士や悪女的要素を見せられても唐突感が否めないし、性に対する葛藤も描かれないので不自然な印象を感じる。あえて、観客を混乱させる為にそうしているとしても。
 だから他の作品と違って、ヒロインが余り魅力的では無い。

 それでもシャーロット・ランプリングが素晴らしくて、バラバラになりそうな物語をググッと締めているのは流石。

 ヴァーホーベンは教会には批判的だし、奇蹟だってインチキだと思っているのかも知れないが、なんだかんだ言って神を信じているんだろうな・・・と感じさせる一端は、神が作られし美しい物である肉体の存在を生き生きと描く所。
 修道女がそんなマッチョなわけ無いだろ!とは思うけど。
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