セサミオイル

ベネデッタのセサミオイルのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.3
映画の中に見る狂気が大好きで見てると高揚してくる(笑)
テンション高めのこの映画の予告編を見てほしい。作品の中で描かれてる狂気に触れられるはずだ。気に入ったら本編も!
前半にお手本のような狂気シーンが沢山出てきて狂気とは何かというのが分かった。
狂気とははたから見てると明らかに異常な行動なのに本人はいたって真剣というところにある。その真剣さを裏打ちするものは迷いのなさなのだ。どんなに非効率と言われようが自分が行きたい場所に行くにはこの道、このやり方しかないのだと信じて突き進みやがて誰も見たことのない景色を獲得する、もしくは獲得するかも知れないのだ。大穴に全財産を注ぎ込むような行為には呆れる一方でもし当たったらヤバいんじゃない!?というほのかな期待がある。これが狂気に魅せられる理由なのだと映画を観ながら確信した。

そしてこの作品の中ではそれらの狂気シーンは大いなるクライマックスへの序章に過ぎない。監督の中でも狂気表現なんか弁当に付いてくる小さいお新香くらいにしか思ってないだろうと後半思い知る。

今となっては特異な時代(時代なんていつでも狂ってなんぼだが)を背景にドラマが大きく展開してゆく。
政治的策略の中でのし上がってゆくベネデッタは天然なのかちゃっかり者なのか。
どちらの要素も見せながら最後まではっきりとは結論付けない。
ここがこの映画の面白さであり、消費されない映画たる所以であろう。
面白かったまた観たい!だけではなく結局あれはなんだったんだといつまでもひっかかる映画。
84歳の現役映画監督が今の時代にどんな提示をしてくるのか。
是非観て頂きたい。
音楽がすごい訳でも壮大なロケーションって訳でもないのでおうちの電気を消してヘッドホンで集中して観れば問題なく楽しめると思います。