イライライジャ

ベネデッタのイライライジャのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.8
宗教、肉欲、疫病を扱いながらもヴァーホーヴェンの手にかかれば娯楽性高い映画となっており非常に面白かった。
ベネデッタは自分こそがイエスの女なのだと真剣に信じ、イエスに憑依されたテイで妄言を繰り返す。真実を述べているのか、神秘主義ゆえの行動なのか、ただの自作自演か。

答えがハッキリしないことこそ宗教の真理であり、面白い部分だ。信仰者は、たった一度でも奇跡が起きると都合良く神のおかげだと騒ぐ。しかし無神論者には神でなく悪魔に見えるのも皮肉だ。神と悪魔は表裏一体と言わんばかりに。

登場人物全員が神や民衆や愛する人のためだと謳いながら、権力や地位ばかり気にしている。教会だけでなく民衆も巻き添えにした阿鼻叫喚のクライマックスは圧巻。
シャーロット・ランプリングの存在感と演技にただただ脱帽。ヴァーホーヴェンが直々にオファーしただけあり彼女なしでは成り立たないほど。

京都ヒストリカ映画祭2022での先行上映にて鑑賞したのだが、知らない男女が上映後に登壇して「セックスが排泄のようでエロく見えないですよねえ」とか言っていた。いやいやむしろ冒涜的エロスの極みだろうよと。カメラも舐め回すようにズームしていたし、性欲は排泄とはまるで違う至極の悦びだと知ってしまったわけなのに…。