yumeayu

ベネデッタのyumeayuのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.0
"聖痕"

80歳を超えてもなお現役バリバリのポール・ヴァーホーヴェン監督の最新作。17世紀に実在した修道⼥ベネデッタが同性愛の罪で裁判にかけられた話を元に映像化。

過去の監督作品を見ても分かる通り、相変わらず登場する女性達は強くたくましい。
今作では修道院という表向きは神聖な場所でありながら、その裏側での女性同士のドロドロとした人間関係が描かれている。

今作でやはり特筆すべきなのは、主人公ベネデッタとバルトロメアの禁断の愛。
同性愛を描いた作品は数あれど、ここまでストレートに官能的シーンを描いているのは今どき珍しい。しかし、背徳感と快楽に満ちたハードな描写の割に下品さはあまりなく、とても映画的な表現だったのは監督の成せる技なのか。

修道院という宗教や信仰の中心地を舞台にしながら、描かれているのはそれとは真逆の人間の欲の部分というのが面白い。
そこからは宗教や教会の欺瞞や信仰の表と裏が見え隠れする。

物語の中心となる主人公のベネデッタだが、何を考えているのか本心は掴みづらく、感情移入が難しい。
キリストのビジョンを見たり、聖痕を受けたりする場面も本当の出来事なのか自作自演なのか真相はわからない。
しかし、仮にそれが嘘で自作自演でも信じる者がいればそれでOKなのかもしれない。考えてみれば神様の存在なんて実際は目に見える訳ではないので、結局のところ宗教ってそんなもんなのかもと思ってしまった。

信じる者は救われる的な、神様を都合よく利用しちゃうのは今も昔も同じような気がした。
yumeayu

yumeayu