延々と歩く

ベネデッタの延々と歩くのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.9
 17世紀イタリアを舞台に、神様の声が聞こえまくる主人公、彼女をヴァチカンに聖人と認めさせ自分も偉くなりたい神父がいたりその割を食って失脚する修道院の母娘がいたり、その渦中で主人公のレズの愛人がバレて大騒ぎになる。

 監督のポール・バーホーベンといえばやはり「ロボコップ」に始まり「ショーガール」の大失敗に終わるハリウッド時代のイメージ。グロくて下世話・ギトついた人間ドラマの人という印象だが、本作も大いにギトつかせてるけどなんか「そういう人たちを自然に撮った」感じでどこかサラリとした雰囲気もあってよろしい。

 「この世はしょせん弱肉強食、強いものだけが勝つのだグヘヘ」みたいなお話は事実ではあるかも知らんけどウルサイというか、その点この映画は俗物どもは破滅したり破滅しつつもそれが浄化になってたり、じゃあ主人公は「ネタバレコメント欄」というラストになってて謎に感動する。この感動は、監督が人間のリアリティを掴んでいるからなのだろう。

 まあ繰り返すけどギトギトなのはそうなのだが。主人公と恋人がアレする時のために小さい木製イエス像をアレしてしまうくだりは創作で、追い出された院長さんが主人公の秘密をつかむため院長室にあったのぞき穴を使うくだりが実話、というのが驚く。

 もう個性派スターの時代の方が長いリリー・フランキーがひとつだけ実話を入れた短編集というのを出版して、読んだ人みなが実話であるのを作り話だと思っていたと話していたが、なんでしょうかそういうバランス。たしか離れ小島に住んでて島にやってくる観測員みたいな人たちみんなとセックスしていた女の子の話だったと思う。

 映画に引っぱられてこちらの文章もだいぶアレってしまっているが秘密の恋人役のダフネ・パタキアは好演していた。ヌードシーンが連続してもべ、べつにイヤらしい気持ちで見てないんだからね!って言い訳させてくれる硬質な美しさ、とはいえやっぱそういう視点でも見れちゃう若い輝きもある。ルックスがイタリアの若手スター、ベネデッタ・ポルカローリにめっちゃ似てた。舞台はイタリアだけどダフネさん自身はベルギー系ギリシャ人だという。
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