シズヲ

べイビーわるきゅーれのシズヲのレビュー・感想・評価

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)
3.0
終始に渡って“読んだことない漫画の実写化映画”感が半端なかったので謎の戸惑いがあった。殺し屋女子という主役二人の設定や関係性も含めて、何だかコアなファンを持つマンガのような雰囲気が強い。二人の日常を描いたドラマCDが出ているらしかったり、本編でもSNSじみた遣り取りが繰り広げられていたりなど、実際そういうマンガ的なノリを狙っているのは伝わってくる。モラトリアムを彷徨いながら緩い掛け合いを繰り広げる少女二人という構図は『ゴーストワールド』を思い出す。振り返ってみれば、あれも苦手だった記憶がある。

“殺し屋女子コンビの日常”という根本の設定も含めて、露骨にサブカルチャーへの目配せが見え隠れしている内容は正直あざとさが強い。シュールさを狙っているであろう会話劇も単にダラけているだけで特にセンスは感じられず、オフビートな面白さよりもクサい痛々しさの方が勝ってしまった。また主役二人の関係性を主題にしている割には照明や色彩の辛気臭さが目立ち、そうした画面の仄暗さも相俟ってどういうテンションで物語と向き合えばいいのかが掴みきれない。本作はマンガ的感性への接近こそ試みているものの、結局B級バイオレンス映画の演出に留まっている感じが否めない。両者が延々と並列したまま一向に馴染まないことへの引っ掛かりが最後まで続く。

主役二人の亀裂からの和解といった中核の筋書きも終盤の山場に対する直接的な関連性を持たないので、何だか奇妙な違和感を覚えてしまう。そもそも冒頭では両者とも別ベクトルの社会不適合者として描かれていたので、仲違いの発端となる対比自体が何処かじっくり来ない。とはいえ終盤のアクション自体はとても素晴らしくて、これだけでもある程度お釣りが取れてしまうかもしれない。殺意に満ちた容赦なき暴力描写もさることながら、役者陣のスタントがキレッキレなので見ていて実に清々しい。特に伊澤彩織VS三元雅芸の一騎打ち、至近距離での凄まじい体術の応酬が見れるので最高である。

それだけに本作は変にサブカル的なユーモアを押し出すより、もっと殺伐とした世界観にシュールさを挟み込む路線で見てみたかった気持ちはある。主役二人にはもっと暴れてほしかったし、血なまぐさい状況でのふてぶてしい掛け合いをもっと見たかった。まぁ要所要所でクスッと笑ってしまう場面もあったので、何だかんだ憎めない作品ではあるのかもしれない。というか実際これで売れて続編も立て続けに作られているので、監督側の試みの方が成功してるんだろうなぁとも思う。
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