よしおか

こちらあみ子のよしおかのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

「気持ち悪いんでしょ?どこが気持ち悪いのか教えて欲しい。」

この台詞が頭から離れない。

徹底して子供の視点で進むストーリーは、子供の目線の高さから撮る低いカメラワークも相まって、是枝さんの「誰も知らない」を思い出した。

どちらの作品にも共通するのは、親側に、もう少し子供に歩み寄って欲しいと思ってしまう点だが、どちらの映画でも、親の子供への愛情はあるし、ちゃんと映画の中でも描かれている。

しかし、その愛情は決して大きく描かれ過ぎてはいない上に、大人だけのシーンもほとんどなく、あくまで子供目線なので、愛情を小さく感じてしまうのかもしれない。

習字を教えるのを遅らせていた事も、あみ子の事を考えての方針だし、親心なのだが、あみ子からすると、「なんでわたしだけ?」と感じてしまうのだろう。

あみ子が弟のお墓を作った事も、母親が喜ぶと思っての行為だし、親への愛があるからこその行動なのだが、それが裏目に出てしまう。

先日観たフランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」でもそうだった。

いつの時代でも、大人は判ってくれないし、子供の事は分からない。

分かっているようで、何ひとつ分かっていないのだ。そういえば、ラストシーンも似ていた。

恋愛のように、タイミングや少しのズレで、すれ違ってしまう事があるのだろう。

きっと大人目線だけから描いたら、印象も変わるし、感情移入する人物によっても印象が変わると思うので、何度も観たい。

ただ、幽霊が出てくるリズミカルなシーンが、自分にはあまりに急で、BGMもあって、それまでの質感とも異なった映像だった為、そのあと少しだけ身構えてしまった。

その後の展開として、誕生日に貰ったカメラで写真を撮ったら幽霊が写っていたり、トランシーバーで幽霊と会話が出来たり、もっと明るくコメディ要素が増えると予想して観てしまっていたので、予想とは裏腹に、台詞が減って家族がギクシャクして行くシーンが心苦しく、胸が痛かった。

鑑賞直後は、「あの幽霊のシーン、必要?」と思ってしまったけど、もしかしたら、楽しく軽快なシーンがあったからこそ、その後がより心苦しくて、映画としては良かったのかもしれない。

観ていた時は、少しだけ拍子抜けしていたけど、もう一度観る時には、見方がわかるから、もっと楽しめそう。

森井監督は長編デビュー作とのこと。
何となくだけど、こういう映画でも、幽霊のシーン等、恥ずかしがらずに撮れる事から、すぐに商業的な映画も撮りそうな気がする。

また観たいし、この人の映画も追いかけたい。

もしかしたら、映画館でもう一度観るかも。

パンフレットが売り切れていたので、買える人は購入する事をオススメします。そして、買えた人は、ちょっとだけ貸して下さい。
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以下、印象的な台詞などメモ

⬛︎印象的な台詞

⬜︎「いいね、裸足って自由の象徴だよね。いじめの象徴でもあるけど。」

⬜︎「気持ち悪いんでしょ?どこが気持ち悪いのか教えて欲しい。」

⬜︎「弟じゃなくて妹なんだって。いつも内緒にする。」

⬜︎「大丈夫か?まだ寒いじゃろ?」
 「大丈夫じゃ!」

⬛︎気になった事・印象的なシーン

⬜︎全体を通した青い色彩
・青いランドセル
・青い制服
・青い車
・幽霊の青い顔
・海の水
・たまたまだろうけど、音楽を担当したシンガーソングライターも、青葉市子という名前。

⬜︎水の要素
・水の音
・墨汁を使う習字教室、垂れる墨汁
・雨の日の破水
・川と海

⬜︎廊下を歩く大人の足音と、子供の足音が、丁寧に拾われていると思って観ていたら、まさかの幽霊の足音が聞こえるという展開。

⬜︎結局、ベランダの音は、鳥が巣を作っていたから?

しかし、そうなると、父には聞こえていなかったことが説明つかないし、ベランダ以外でも聞こえた彼らの足音と一緒だった気もする。

母が病んでしまい、兄がグレて、暗くなっていく家族の先が見えなくて、何かが怖い気持ちが見せた幻聴と幻覚なのだろうか。

⬜︎誕生日プレゼントのトランシーバーとカメラという完璧過ぎるアイテム

トランシーバーは、話すか聞くか、一方通行である。相手の話に耳を傾けないと、相手の声は聞こえない。

母とあみ子、またこの家族のすれ違いを象徴するようなアイテムで、最後には、本音を打ち明けるシーンで意味を持ち、無くなった片方は、グレてほとんど家にいない兄を思わせる。

そして、引っ越し前に捨てたインスタントカメラ。

祖母の家に引っ越して、新しい生活をはじめる事になるから、母を撮ったカメラを捨てたのだろう。

誕生日の時のシーンで、「結局、家族みんなで写真撮らないの?どちらか謝れば良いし、父親も仲を持てよ。」と思ったけど、結果として、あの時にすれ違った母と娘が、同じようにすれ違っていて、引っ越しの荷物をまとめている時には、「カメラ捨てないで!お母さんの写真が残ってるよ!」と思ったけど、その写真自体を登場させないところがとても映画的で好き。

⬜︎あみ子のキャラクターが細かく表現されたディテールも良かった。

あみ子のちゃんと閉まっていないランドセル、ランドセルを前に抱える仕草、襟が折れてしまっている制服、制服のちょっとデカいサイズ感、サンダルでも構わず側転してしまうところ、虫が好きで一人でも楽しそうに遊んでいるところ

⬜︎度々映る昆虫は、本能的で、いつまでも子供っぽいあみ子を印象付ける為だろうか。小学生の頃は触れた虫を、中学生くらいから嫌いになった事を懐かしく思った。

⬜︎のりくん(?)が保健室で、あみ子を殴ったのは、昔食べさせられたシケたクッキーが、チョコクッキーのチョコだけを舐めたものだと分かったから? お墓の件で怒られた事など、日々のストレスが爆発したのだろうか。

⬜︎お母さんの口元のほくろは?
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