クマヒロ

こちらあみ子のクマヒロのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.7
あみ子の目線を通じて語られる本作は、徹底してあみ子に寄り添い、見ている景色や聴いている音、時にはあみ子の感じる暑さや空気感まで感じさせてくれる作品でした。
校舎のファサードを捉えたファーストカット。はじめこそ自然に思える少年時代の狭い世界を端的に箱庭的に表していることが巧く、あみ子と世界とのギャップを意図的に徐々に感じさせていることがよく分かりました。あみ子はそのままでいるのに箱庭的だった世界が徐々に崩れていくことを見て、観客側にもそれを突きつけてきます。
これはすごいものを観たなと鑑賞後から本当に忘れられない映画体験になりました。あみ子のことをよく考えてしまいます。

原作を読んだ時の如何ともし難いこの世界の生きづらさや冷酷さもミニマムな世界から描かれることでより浮かび上がり、時折挟まれる虫や蛙、蛇のインサートと対比して人間の世界の嫌な感じがより伝わってきました。

本作が初長編作品とは驚きの森井勇祐監督。とにかく作品を見せる力がとてつもない監督だと感じました。時折挟まれる生き物のインサートは前述以外にも子供ならではのちょっとしたワクワク感も同時に感じさせますし、あみ子が投げたミカンが全く落ちてこなくなったと思ったら電気が暗くなり、声が急に聞こえ出すような時間や空間を超越したようなカットを表現していたり、原作では無かった「おばけなんかないさ」大合唱シーンとそれを使ってラストで清々しい仕掛けを用意していたり、、、等々なんだかずっとハッとさせられました。
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