エリザベス

こちらあみ子のエリザベスのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

見る人の年齢、性別、社会的な立場によって捉え方が変わるスタンド・バイ・ミーみたいな作品。
だけど決定的に違うのは現代社会の生きづらさだったり子育てが孕む家庭の脆さ。
今の時代をリアリティじゃなくてリアルに映されてるから懐かしさみたいな過去の自分が持っていたであろう感情よりも今の自分が持つ閉塞感を見終わった後に感じちゃうな。

あみ子は確かにだいぶ変わった子ではあるけど生来そうだったってよりかは周りがそうさせた感、時代が生んだ子ってイメージが強い。
「なんで教えてくれなかったんだろう、みんな秘密にするよね、毎日。」ってトランシーバ越しに言ってたけど確かにそれは一理ある。生き方に正解は無いけど学校っていう集団社会に放り出されたら少なからず周囲に合わせないと浮く。1回浮いたら誰もそれを教えてくれないし何がダメでどう直せばいいのか分からないから次に繋がらない。
だけどあみ子もあみ子で唯一自分に教えてくれる存在だった坊主の忠告聞く気すら無かったからやるせないよなぁ。

ネガティブな感想ばっかりになるけど、あみ子が学校で裸足だったのは多分自分がそうしたいからってよりもいじめで隠されてたからなんだろうし、学校側もそれを黙認してる感じあったからもう完全に社会からはじき出された子どもになってる。
家族も家族で、流産をキッカケに崩壊し始めたからあみ子を守るものが何も無い。
挙句の果てに祖母に預けられるし、異物が弾き出されるみたいで残酷。

でも希望が決して無いわけじゃなくて、坊主はあみ子に対等かつ尊敬してる部分も持ちながら接してくれてる。あみ子がそれに気づいてなかったのは少し絶望感じるけど。
兄も思春期でグレてるだけで、根は優しいことは分かるからこれからのあみ子は兄にかかってる部分もある。ベランダの鳩を追い払ったのは間違いなくその暗喩。兄がいきなり部屋に来たのもきっと無くしたと思ってたトランシーバーをずっと持ってたからなんだろうな。

書きすぎるとまとまりが無くなるからこれくらいにするけど、総じて感じた事は最初に言ったように閉塞感と生きにくさ。
こちらあみ子って題名も作品内であみ子の思いや行動が理解されず一方通行になってしまっているあみ子の世界からは見えていない残酷な世界と、あみ子が抱える飽くなき探求心が持つ希望から来るダブルミーニングから来る題名だとしたら個性をどう捉えて生きればいい?
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