yaotomo

こちらあみ子のyaotomoのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

日常で意識的に見ないようにしてきたものを至近距離で見せつけられてる映画だった。
余韻というよりは、ダメージが強い。
トラウマに近いかもしれない。
ベトついていたり、臭そうだったり、汚れているシーンが多く、ストーリーの中に漂う空気も気まずく、「誰かキレるんじゃないか」みたいな張り詰めた空気がずっとある。
子供の時に感じた「あ、やってしまった」みたいな、手が熱くなっていくあの感じ。バンドのたまの歌の世界観に近しいものを感じた。

食べ物の撮り方も、観客に抵抗感を感じさせることを狙ったようなものだった。
みずみずしいとうもろこしが、雑巾のように床に水を垂らすシーン、そしてとうもろこしが床に落ちるシーン。あみこがクッキーのチョコの部分を無心に舐めるシーン。鶏肉の骨を噛み砕こうとするシーン。よだれ感というか、歯というか舌というか、肉体的で気持ち悪かった。食べ物がここまで気持ちの悪いものとして描かれているのをみてヤンシュヴァンクマイルの「アリス」を思い出した。

あみこの行動に、その場にいる誰かがキレるのではないかという緊張感もずっとあった。冒頭のオレンジを投げるシーン、引越しで要る物要らないものを選別するシーン、流産してしまった自分の妹の話とオバケを悪気なく関連づけるシーン、保健室で、子供部屋で「オバケなんてないさ」を絶叫して歌うシーン。
「オバケなんてないさ」もう聴けない。
終始この「誰かが怒るかも」そんないつ爆発するかわからない時限爆弾を気にしていた。

冒頭の我が子に苛立ちを見せる母、
随所で自分の暴力性と戦っている父の姿がきつかった。この2人も結局人間で、親のあるべき姿と自分の感情とのせめぎ合いで
葛藤し続け、それぞれ違う形でリタイアしてしまう。

あみこが行動一つ一つによって家族や教室の中で邪魔物扱いされている。誰も邪魔物とは言わないが、見えないようにするし、考えないようにしている。自分も邪魔物のような気持ちで見てしまうことが多々あった。しかし、それであるが故にあみこはどこにも収まることができていない。終盤の「みんな自分には内緒にする」というあみ子のセリフが象徴的だ。
周囲から疎外されていることはあみ子も分かっているような様子であった。
この邪魔物扱いをしてしまうというのをこの映画では伝えたかったのだろうか
(追記 あみ子の問いかけに誰も答えない これがテーマか 基本的なことだった)

横からの映像が多い印象。
中でも下校する小学生とバスを、
対岸から撮ったカットが特にお気に入り。

Spotifyでサントラが良かったので「丁寧な暮らし」感のある映画かと思っていたが、とっても重かった。
サントラ最高です。
話見た上だと今までと同じようには聴けないけど、、
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