空海花

復讐者たちの空海花のレビュー・感想・評価

復讐者たち(2020年製作の映画)
3.4
イスラエル出身の兄弟監督 ドロン・パズとヨアヴ・パズが、復讐計画に実際に関わった人へのインタビューなど様々なリサーチを経て、作り出された、
ホロコーストの歴史を題材にしたスリラー作品。

ホロコーストを生き延びたユダヤ人によるドイツへの復讐計画“PlanA”が原題。
その恐るべき内容が映画内で明かされる。
イスラエルの一般市民はホロコーストの話を聞かされて育っているというが
劇中に出てくる“ユダヤ旅団”や“ナカム”などの集団や
この大きな復讐計画を知っている人は少ないという。

「目には目を、歯には歯を
 600万人には600万人を」

第2次大戦後、主人公マックス(アウグスト・ディール)は強制収容所から帰還する。
生きて帰ってきても周囲は冷たく
密告した人物に会うが、敵意を剥き出しにされ
家族の手掛かりを探すものの、収容所で殺されたことを知り、絶望と失意の底へ突き落とされる。
彼はそこで“復讐”という行動に出会ってしまう。

“プランA”その計画にももちろんゾッとするが
周囲の冷酷さや敗戦の過酷さにも心が冷え
家族が殺されたことを知った時のマックスの反応は胸が張り裂けそうになる。
難民キャンプに行くくらいしか道もないこと
同胞が日々殺された現実を見てきたであろうこと
それとは別に“ユダヤ旅団”がパレスチナにユダヤ人の楽園を夢見ていたこと
断片ながら印象に残る。

「幸せに暮らすことが復讐」
その言葉は答えのように思えるが、
その後のイスラエルを思うと、鬱々とした気持ちにもさせられる。

繰り返される言葉 “Never again”
繰り返されなければいけない言葉。
知っておかねばならない歴史。

監督は復讐への憎悪と良心の葛藤を
アウグスト・ディールと
シルヴィア・フークスの男女に分けた。
演技には申し分のないはずの2人だが、
そのドラマ性は単純に感じ、あまり納得がいかなかった。
アウグスト・ディールさん好きなので
この仕上がりは個人的にかなり悔しい。

それでも何度もこの作品は問いかけてくる。
大切な人を傷つけられた時にどんな感情が起こるのか
1度は相手をどうにかしてやりたいと思うかもしれない
じゃあどうするのか?
生きる希望を無くした時、
復讐をその糧にすることは生きる目的になるのか
それは正しい訳では決してないが
善悪をすっ飛ばして
人はそれほど生きるための目的を渇望しているのか。
復讐とはなにかを問い続けてくる。
結末は、悪魔の袋に委ねて─
そして何より「プランA」を初めて映画化したという意味でも大いに意義ある作品だろう。
ドラマ仕立てになっているから、確かにわかりやすさもある。
冒頭にもある水とアウグスト・ディールの画はベタとはいえ私得。


プランBは実行された。。


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