"Looking Through A Glass Onion"
富を得たことで他者への共感性を失い野蛮性が露わになったクソ野郎どもを批判するサタイア映画は数多い。
今作もその系譜にあり、殺人ミステリーという形式は取りつつテーマ面では以下の作品群とも近そうだ。
『ウィークエンド』
『皆殺しの天使』
『アメリカンサイコ』
『ハイライズ』
『コズモポリス』
等々。
エドワード・ノートンはマスク氏を始めとするIT長者のイメージを集約したいけ好かない金持ち役がとてもハマってた。
"ブラックバード"をつま弾いたあと、
「これ、本物のポール・マッカートニーのギターなんだぜ」
とドヤりながらそのギターを乱暴に投げ捨てる登場シーンの時点で、
「こいつはいい気になった愚かな金持ち」
と視聴者に分かりやすく提示するのが良い。
他の人物たちはインフルエンサー、政治家、科学者、元ファッションアイコン、そのマネージャーといった人々。
みんなカネに翻弄されカネに屈服させられる心弱き者として風刺される。
『アンテベラム』もそうだが、ジャネール・モネイが演じる「いい気になったクソ野郎を火炙りの刑に処する女」はやはり痛快だ。
タイトルの "グラスオニオン" はエンドクレジットでも流れるビートルズの楽曲タイトル。
歌詞のひねくれた考察にばかり熱心で、まっすぐな姿勢で歌を聴かないファンたちを風刺した歌詞が特徴だ。
「物事を複雑に考えようとしすぎ、かえって真実から遠ざかる」
という教訓・主題は劇中でも強調されていた。
これはたまたまかも知れないが、前作のアナ・デ・アルマス、そして今作のデイブ・バウティスタと、ダニエル・クレイグが007で共演してきた俳優たちと再び共演するのも『ナイヴズアウト』シリーズのわくわくポイントになっている。