このレビューはネタバレを含みます
オクラハマのスティルウォーターで肉体労働をしながら暮らす典型的右派の主人公ビルは、マルセイユの大学留学中にルームメイト殺害の疑いで逮捕され、現在も収監中の娘がいる。娘に面会に行った際、娘はビルに一通の手紙を渡し、弁護士に届けて欲しいと言った。その手紙には自らの冤罪と、それの再調査の依頼が書かれていた。ビルはその証拠集めのため帆走するが…。
冗長だの、予想していた映画とは違っただの言われてるが、かなりの良作だった。確かにスリラーやサスペンスを期待していると少し面食らうかもしれないが、本作は誰もが経験するであろう、エゴ、それから生み出される自己嫌悪を描き出すのに十分な温度を保ちながらのサスペンス的な作りであるからだ。
低温度な映画こそ観客は己の実人生の断片を映像の中から見つけ出す余地を与えられ、自分のストーリーにすることができる。本作を見てつまらないと感じた人はある種幸せであろう。
この映画はダメ人間の主人公とそれに抗おうとしながらも十二分にそれを受け継いだ娘の2人の物語。ダメ人間にもしがみつくしかないリアルがあり、諦めなければ少しの思い出や新たなリアルが与えられる。監督はこういうことを描きたかったのではないだろうか。主人公たちが終始醸し出す不幸な匂いでバッドエンドを予想していたが個人的にかなりハッピーエンドだった。