【太陽に近すぎる村】
U-NEXTにて。ひどい干ばつの影響で過疎化が進む、マハーラーシュトラ州・アーガスワディ村の惨状をスケッチした、2018年の短編ドキュメンタリー。
余所者には一見、美しい遠景に見えても近寄ると、確かに“乾き”がひどく、活きがありません。
村人は、人が減ってゆく現状をただ嘆き、政府になんとかして欲しい、と呟きます。
また、風力発電?のため入り込んだ電力会社が、村を搾取している、とも嘆きます。
しかし、村人が集まり話し合っても愚痴にしかならず、改善へと行動する様子は見られない。
その中でただ独り、井戸を掘り続ける男が、か細い希望として描かれます。
…という映画なのですが、う〜ん…。
こういう過疎問題を抱えた村は、広いインドには無数にあると思う。が、どうして本作は、現状の“紹介”で終わらせるのかがわからない。
映画の中だけだと、当事者は愚痴って終わっている。次の一歩はどうするのか?またはどうしたいんだろう?何もしないなら、ああそうですかと言うしかない。
政府の対応に問題があるなら、そこまで映画として追って欲しい。実際、2018年は、
“インド西部マハーラーシュトラ州で、過去数か月に農民600人以上が自殺する危機的な事態となっている。不作による収入の減少が背景にあるとみられ、国の人監視機関は16日、州と中央政府に調査と対応を勧告した”
https://www.afpbb.com/articles/-/3182810
…そうだ。わざわざ映画で訴えるなら、こうした現実も取り込んで、余所者をビビらせるまでに村を掘り込み、描いてほしい。でないと世界に届かないと思うのだが。
それにしても本作はパンデミック以前の頃。それ以降ともなれば、どんなヒドイ状況に陥ったのだろう?
ボリウッドの中心でもあるムンバイを抱え、経済発展が最も進んだ州の一つなのに、なんという格差だろう?…マードゥリー・ディークシトの出身州でもあるのですね。
動こうとしない村人たちは、ヒンズーの神々が何とかしてくれる、とか思い込んでいないか?“神聖なガンジス川の水で沐浴すれば神様は新型コロナから守ってくれる”と盲信して感染対策をせず、大規模なヒンズー教の祭りで大騒ぎして、世界に轟くパンデミックを引き起こしちゃった国民性、だからなあ…。
インドの片隅の現実を知る機会とはなりましたが、映画としては、大変中途半端だと思いました。
<2024.4.10記>