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ジャッカルのボックボックのレビュー・感想・評価

ジャッカル(1997年製作の映画)
2.0
※ネタバレ※
「ジャッカルの日」を名乗らせない正義

荒唐無稽な魔法映画(主人公不死身。ボスキャラ無双というご都合主義映画)には寛容だけど、リアリティを追求っぽいスタンスには徹底して厳しい態度で臨んでおります。
超一級の名小説「ジャッカルの日」。フォーサイスの原作が凄すぎて映画化は小説に比べるとうむむなことが多いけれども、「ジャッカルの日」はかなり評価を得ています。
しかしこの映画は「ジャッカルの日」ではなく、「ジャッカル」。この潔さは評価できる。

まー良くも悪くも名作だった原作と前作と比較されてしまうハンデをどう覆すか・・・・はやっぱり全然無理でした。
ただ、さすが売れっ子のリチャード・ギアとブルース・ウィリスの力業で、普通にストーリーは入ってきます。あくまでフツーに。

ただ緻密かつ冷酷に計画し、行動する正体不明の存在ジャッカル、ではなく、バンバン拳銃撃ちまくる(一応サイレンサーしてた)、体当たりで地下鉄に飛び込むのはマクレーン刑事でしかない。

んで、暗殺手段がリモコンはともかく、重機って!(クレーンの重機じゃなく重機関銃ね)
情緒もへったくれもない、全員皆殺しで良いならスティンガーぶっ放せば良いのでは。ドッカンバッカン会場大騒動!と、「ジャッカルの日」の繊細な描写、松葉杖仕込み銃の何ともデリケートな暗殺とは比較になりません。

前作の繊細で冷酷でバイ(←これ含めて恐ろしげな人物描写になっていた。)といった謎の人物ではなく、世界一ついてない男的な堂々たる存在感がリアリティを損なっています。

地下鉄バトルの後、ラストシーンはお決まりのターミネーター落ちで、死んだと思ったら生きてたパターンだけど、殺しのプロは抱き合う前にトドメ刺さないのか?あさーりトドメ撃たれてその後の溶鉱炉に投げ込まれるまで蘇り、はありませんでした。

褒めるとこ;
故・野沢那智さんの狂った声は久々に聞いたけど、本当に狂気を感じさせる素晴らしいものです。アラン・ドロンやアル・パチーノの時じゃない、コロンボ「死の方程式」で犯人が半狂乱になって叫ぶ時のあの声。本当に最高でした。